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Highlighting JAPAN

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グローバリゼーション

公共・民間両面の海外派遣ボランティア

JICA海外協力隊(仮訳)



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国際協力機構 (JICA) は、開発途上国に対する政府開発援助 (ODA) 制度を担う日本の機関である。この計画の中でも重要な事業として、人道支援と社会発展のために時間と専門能力を提供しようとする青年海外協力隊およびシニアボランティアのボランティア事業がある。

JICAボランティアは派遣先地域に住み、地域住民と共に働き、地域の言語を話し、相互の理解を深めると同時に派遣先地域住民の自立を促すことに重点をおいた活動を行なう。青年海外協力隊は、原則として年齢が20歳から39歳までで、自身の技術や経験を活かしてみたいという強い意欲を持っている青年が対象である。派遣期間は2年間で、現在も青年海外協力隊1744名が、開発途上国で活動している(2013年8月末現在)。これに対して40歳から69歳までが対象のシニア海外ボランティアは、キャリアを終えた後も引き続いて社会に貢献する意欲がある退職者が多い。シニア海外ボランティアは、それぞれの分野の専門家として培った高度な専門能力と経験を提供する。現在458名のシニア海外ボランティアが活動している。

青年海外協力隊への参加は、日本では得られない経験を得ることができるだけではなく、特に高度な技術を持たない若者にも応募できる職種があることもその魅力である。選考プロセスでは語学、技術、健康が要求される。また、選考に合格するとさらに、語学、異文化交流、健康と安全、派遣先国の現状と歴史に重点を置いた派遣前の特別研修が行なわれる。

近年、同事業において新たな制度が大きな注目を浴びつつある。それは「民間連携ボランティア制度」という、企業と連携してグローバル人材の育成に貢献するプログラムだ。各企業のニーズに合わせ、受入れ国や要請内容、職種、派遣期間等をカスタマイズすることができる。企業が将来、事業展開を検討している国に対して、ボランティアへの意欲のある従業員をJICAボランティアとして派遣する。従業員は現地の人々とのボランティア活動を通じて、言葉や文化、商習慣、技術、ニーズを把握する。現地の課題を解決する過程の中で、現地との深い信頼関係を作る。この新制度の特徴はその推薦プロセスにある。海外における開発プロジェクトへの関与を望む企業が従業員をこの制度への参加対象者として推薦することができ、その従業員はその後JICAによる研修を受け、派遣される。そのような企業からは、マーケティング、製造、サービスなどの分野において、特殊技術や専門的助言が提供されることが期待される。2012年以降、28の企業がこの制度に基づく合意書を締結し、9名がJICAボランティアとして派遣された。

民間連携ボランティア制度の一例として、28歳の高野亮さんがいる。大手生命保険会社の営業マンだった高野さんは、会社の人材トレーニングプログラムとして位置づけられたJICA民間連携ボランティア制度にて、海外へ行くチャンスに飛びついた。他のプログラムと比べ、現地社会と草の根レベルで関係を持ち、支援する必要性を伴うJICAボランティアの厳しい環境に高野さんは惹かれた。「これに成功すれば、何でもできるはずだ」と高野さんは話す。マニラから600kmほど離れた小さな沿岸の町に駐在し、ボランティアに参加して2カ月ほどになる高野さんは、現地状況を理解し、問題の評価を行うため、現在では現地社会の住民と交流している。高野さんは、2つの産業プロジェクトと1つの観光プロジェクトを通して、多くの人々が貧困状態にある現地社会に仕事を提供したいと希望している。その観光プロジェクトとは、現地の固有の自然遺産やマングローブ、ジャングルを利用して訪問者を誘致する狙いである。一部住民は英語を話せるものの、多くの住民がタガログ語の特徴的な方言を話す中、高野さんは「言葉の壁」に直面しており、これを越えたいと望んでいる。高野さんは、ボランティアの参加によって語学力や海外環境で働く能力を磨きたいと思っており、将来の進路として国際的な場で活動できることに期待して胸を膨らませている。

JICAボランティアは日本に帰国しても引退するわけではない。帰国したボランティアメンバーはその経験と専門能力により、異文化交流に貢献するだけではなく、「日本の活性化」においても効果を発揮している。国内での大局観の涵養や意思疎通能力の強化を狙いとして、海外で問題解決経験のある人材を欲する地方自治体や企業が、JICAボランティア経験者を求人することが多々ある。JICAボランティアは海外において日本を代表するという重要な役割を担っているとともに、彼らは献身的な態度で国際交流に貢献している。



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