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Highlighting JAPAN

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リーニングイン ーザ・パワー・オブ・ウィメノミクスー

貧困の連鎖を断ち切る仕組み、

マイクロファイナンス(仮訳)

English



国際連合食糧農業機関 (FAO) によれば、途上国の農業セクターでは労働人口の43%が女性だ。しかし、女性は男性と比べて所有する土地や家畜などの生産資源が少なく、金融サービスや教育、技術へのアクセスも限られている。

1976年、当時バングラデシュ、チッタゴン大学の経済学部長であったムハマド・ユヌス氏は現状改善を目的とする研究プロジェクトを立ち上げ、農村地域の貧困層を対象にしたマイクロファイナンス(小口金融)を始めた。個人のお金をユヌス氏が自ら拠出し、無担保で最初の融資27ドルを大学近郊に住む42人の村人たちに提供した。

一年後、この試みはグラミン銀行のプロジェクトに発展し、銀行を使いやすくしたことで、農村地域の貧困女性に自立する機会を創出した。バングラデシュの伝統文化として食事を最後にとる女性は、困窮を最も強く感じ、家庭経済を深く理解していることにユヌス氏は着目した。彼は女性を対象としたマイクロファイナンスが貧困層の家庭においてもっとも適した解決策だと考えた。プログラム自体は男性をまったく除外しているわけではないが、その主な目的は最貧家庭の女性たちに、彼女たち自身で管理できる銀行サービスを提供し、貸し付けをコントロールして貧困の連鎖から脱却させることにある。

グラミン銀行のプロジェクトは慈善事業ではなく、無担保のマイクロファイナンスなので、いずれは返済しなければならず、申請者は融資の返済を保証しなくてはならない。融資を受けた者はそのお金で乳がとれる牛を購入したり、椅子を作るための竹を手に入れたり、お香を仕入れて露店で販売したりする。返済率が極めて高かったため、グラミン銀行プロジェクトは1983年に政府の法律により、独立銀行(政府認可の特殊銀行)となった。

1988年、ユヌス氏は、彼のマイクロファイナンスによる貧困救済の思想を世界に広げるために作られた『プラネットファイナンス グループ』の評議委員会議長に招聘された。

ユヌス氏の功績であるグラミン銀行のマイクロファイナンスは、世界の貧困問題に対する戦略として注目され、大きく世界に知れ渡ることとなった。2006年、ユヌス氏とグラミン銀行は、 貧困層における経済的および社会的発展の創造に対する努力に対し、共にノーベル平和賞が授与された。2011年までにグラミン銀行は2,564の支店を開設し、800万人以上に融資を行っている。うち、97%が女性で、返済率は一貫して98%を越えている。

2006年に創設されたプラネットファイナンス ジャパンの芳宏一 (かんばし こういち) 事務局長代理は「ビジネスを始め、お金を稼ぐことは社会経済の構造を変えると私たちは思っています。そして多くの国で、これは特に女性にとって言えることです」と話す。

2011年から、プラネットファイナンス ジャパンは国際協力機構 (JICA) とともにフィリピンのミンダナオ島で零細農民の金融アクセスを改善する活動を行ってきた。ミンダナオ島はフィリピンでもっとも貧しい地域のひとつだが、同時に国の農産物輸出品目の上位8品目を生産している。状況を改善するために、プラネットファイナンス ジャパンは現地のマイクロファイナンス機関を対象に、零細農民のニーズに適したマイクロファイナンス商品の設計・導入などの支援を行っている。また同時に現地の融資を受けた農民に、季節ごとに大きく変動する収入の管理方法の指導も行っている。

FAOは、途上国の農業においての性差を埋めることで、女性の農場の生産量は20~30%割増え、その結果、世界の飢餓人口は12~17%減ると見越している。 「途上国のファイナンシャル基盤を確立することでその成長に寄与できることは本当にいいことで、素晴らしいと思っています」と芳氏は語る。

プラネットファイナンス ジャパンは、日本ではまだあまり知られていないマイクロファイナンスの利点を今後も周知して行くとともに、世界中の貧困を緩和するために活動を続けて行くという。「日本からやるのは難しいですが、国がJICAなどの機関を支援していますから、それらの組織と協力してやっていくことができます。素晴らしい機会です」と芳氏は言う。

マイクロファイナンス
貧困層に貸し付けや、預貯金、保険などのファイナンシャル サービスを小規模で提供すること。チャリティーではないが、従来の融資機関では取引手数料が高くつくため利益をあげられなかった事業を対象にした極めて小規模な融資などをマイクロファイナンスは可能にした。「マイクロクレジット (小規模貸し付け)」という言葉はしばしば「マイクロファイナンス」と同義で使われるが、正確にはマイクロクレジットはマイクロファイナンスの一面に過ぎない。



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