Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan January 2014>Leaning In - The Power of Womenomics -

Highlighting JAPAN

前へ 次へ

リーニングイン ーザ・パワー・オブ・ウィメノミクスー

女性の人身取引撲滅を目指して

クロスボーダーな多分野協働(MDT)(仮訳)



English



「人身売買」という言葉は、普通の人とは何も関係のない、何か世界の暗闇に存在するような何かだというイメージを受ける。しかし現実には、人身売買はいたるところにある問題である。国連薬物犯罪事務所(UNODC)の調査によれば、被害者の79%は少女を含む女性である。

「JICAが取り組んでいるメコン地域における人身売買だけをとっても、タイ、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマー、中国と6ヶ国で地続きの取引があります。」とJICA(国際協力機構)Gender and Development部のシニアアドバイザー、田中由美子氏は語る。そうした国々から様々な国へのルートが存在し、「世界で毎年約80万人の国境を越えた被害者がいることがわかっています。」そしてその79%は性的搾取だという。

JICAでは現在、日本をはじめ、人身売買の影響を受けている各国政府の協力のもと、様々なプロジェクトに取り組んでいる。4P、つまりPolicy(政策)、Prevention(予防)、Prosecution(加害者取締・刑罰)、Protection(保護・社会復帰)の面から多角的で相互につながりを持った対策を行う方法は、確実に結果を出している。特に、ホットラインの設置を行うJICAベトナムプロジェクトや、被害者の社会復帰支援をするJICAタイプロジェクト、JICAミャンマープロジェクトで、PreventionとProtectionの2つのPのアプローチに携わっている。

田中氏によると、最も成功したのは、現在タイで実施されているタイプロジェクトだという。タイプロジェクトでは、MDT(Multi-Disciplinary Team)と呼ばれる多分野協働チームが、それぞれの専門分野を活かして効率的に機能するシステムが確立され、調整役の人身取引対策部(BATWC)を中心に、警察、労働省、公的シェルター、弁護士、外務省、そして病院、検察官、入国管理局と各国NGOが相互協力している。

農村部でのMDTは、タイの首都バンコクの中心チームと情報を共有する。次に中央MDTは関連する国々が相互に協働しやすくなるよう海外のネットワークとの情報交換を行い、情報やデータリソースは同様に他の国でも統合され、使用される。

「たとえば、バンコクのある場所でタイの農村地帯から被害者が軟禁され、働かされているとの情報をもとに、被害者を捜索・救出するのは警察の役目です。保護された被害者の健康状態を調べ、必要に応じて治療するのは保健省管轄の病院が担当します。被害者は公的シェルターに保護されて生活し、労働省は被害者の社会復帰のための職業訓練を担当します」と田中氏は語る。NGOもこうしたプロセスに協力して、被害者がたらいまわしにされることのないようにしている。また、被害者が外国に売られるケースや外国人が人身売買によってタイに連れてこられるケースでは、外務省や入国管理局がビザの手配などをする。
農村部でのMDTは、タイの首都バンコクの中心チームと情報を共有する。次に中央MDTは関連する国々が相互に協働しやすくなるよう海外のネットワークとの情報交換を行い、情報やデータリソースは同様に他の国でも統合され、使用される。

「MDTは日本国内でも医療や福祉サービスで採用されている協働方法で、人身売買の根絶に向けた取り組みとして有効です」と田中氏は説明する。

挑戦はまだ続く。「MDTのメンバーは移動するため、全体として経験とノウハウを維持するのが難しいとわかりました」と田中氏は認める。「多くの分野が関わっているため、情報は必ずしもスムーズに伝達されません。地域の間のギャップもあります。そして、MDTの活動拠点を備えていないエリアもあります。こういった問題もありますが、強化して、被害者の安全と利益のために将来にむけて改善する価値がある共同モデルであると信じています。」

タイプロジェクトをモデルケースに、今後もJICAはASEAN各国で人身売買撲滅のためにMDT活動を行ってゆく。そして、タイに100人を超えるメンバーがいるピアグループ活動に手ごたえを感じている。サポートメンバーの研修や活動の支援を行うことで、被害者同士がお互いに助け合うことができる関係が構築されている。

「クロスボーダーケースであっても各国間の連携を強化して、地域全体の人身取引を根絶することが、このプロジェクトの目標です。」



前へ 次へ