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Highlighting JAPAN

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海外で活躍する日本人

山田和樹

音楽のかたちを創造する(仮訳)

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音楽は一種の言語である。音符はアルファベット、リズムや音程は文法、演奏者による曲の解釈が俗語である。ロックやポップからクラシック、ジャズ、ブルース、果てはヒップポップに至るまで、多様な方言で語られる言語なのだ。コンサートで、種々の異なる楽器が一斉に曲を奏でる時はいつも様々な要素を見事に調和させながら、一つの声として語らせる匠の技に感動せずにはいられない。

ジュネーヴを本拠とするスイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者として、山田和樹氏はこのことを当然よく理解している。ヨーロッパにおいて初舞台の一つであった2010年の衝撃的なデビューの後、首席客演指揮者としての地位を確固たるものとした。同時に、日本フィルハーモニー交響楽団の正指揮者、また東京混声合唱団のレジデンシャル・コンダクターでもある。幾多の栄誉ある賞を受賞し、著名なソリストと数多く共演するとともに、フランス、ドイツ、ロシア、オーストリア、チェコ共和国、イギリスその他の国々でオーケストラの演奏を指揮してきた。

山田氏は1979年に神奈川県に生まれ、幼い頃からピアノに慣れ親しんでいた。トランペット、パーカッション、ビオラ、クラリネットにも一通り挑戦したが満足できず、再度ピアノの演奏に戻り、東京芸術大学に入学。2001年に指揮科を卒業する。学生時代に横浜シンフォニエッタを結成。22歳にしてベートーベンの交響曲全9曲を指揮する。現在は夫であり父親でもあり、ベルリン在住ではあるものの、ジュネーヴ、モンテカルロ、日本の間を頻繁に行き来している。

一体どのようにしてその活動を維持しているのだろうか。山田氏は言う。「朝、目が覚めて、自分がどこに滞在しているのか、今日が何曜日か、はっきりと分からないことがよくあります」。山田氏によると、移動がこれほど多い生活で最も大変なのは、演奏者と分かり合うことだそうだ。「ほぼ毎回、新しいオーケストラと共に演奏します。自分の指揮に付いてきてもらえるよう、自分の持つイメージを演奏者全員と共有しなければなりません。初回のリハーサル前は毎回一番緊張します。その後は徐々にお互いを知り合っていくので、良くなっていきますが、簡単ではありません」

山田氏の指揮には決まった特徴がある。激しく派手な動きではなく、流れるような優雅さが基盤となっている。「作品を自分なりに解釈するように努めています。作品の中に、いわばドラマを見出すのです。音楽作品には、そこに語られているストーリーがあると思います。自分はいつも、このストーリーを汲み取ることに精力を費やしています。特に叙情的な音楽、カンタービレが好きで、自分の目指す音楽はそこにあります」。自分の夢は「オペラ指揮者になることだ」と山田氏は言う。

人生の初期にこれほど多くを成し遂げた山田氏だが、前途にあるさらなる挑戦にも目を向けている。「一旦、勝者としての一歩を踏み出したら、周りは常にさらに良いものを期待してきます。そのプレッシャーをひしひしと感じています。単に良い演奏をするだけではもうダメなんです」

様々な国籍の人と一緒にうまくやっていくコツはなんだろうか。山田氏はこう語る。「普段は英語で皆に話しかけます。でも語学はあまり得意ではないんです。ドイツではドイツ語で話し、ジュネーヴではフランス語を使わなければなりません。そしてもちろん、ほとんどの楽譜はイタリア語で書かれています」。重要なことは言葉そのものではなく、コミュニケーションすることへの熱意である。

国から国へと移動しながらの仕事は、日本での生活に比べれば、それほど速いペースではないと山田氏は考えているようだ。そして、こうも述べる。「日本と海外との生活は、根本的に違います。日本はとても忙しい国で、一晩中開いている店がたくさんあるので、毎日24時間ほしいものがいくらでも手に入ります。海外に行くと、コンビニは近くにないこともあります。でも、生活のペースはもっとゆったりしています」

このコミュニケーションの才能と芸術への情熱がある限り、これから先、幾年もの間、山田氏は音楽の語る数々のストーリーを聴かせてくれ、私たちを魅了し続けることだろう。



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