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Highlighting JAPAN

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海外で活躍する日本人

生け花を通して人生を変える

新井里佳氏(仮訳)



新井里佳氏がかつて日本の芸術である生け花のアシスタントをしていた頃、指導者になるとは、ましてや遠くフランス、中近東、アフリカで生け花を紹介することになろうとは、夢にも思わなかっただろう。

きっかけは、奨学制度によるご主人の2年間のパリ留学だった。2006年に夫婦でパリに渡り、その後、奨学期間が終了した後もご主人はパリに留まって働くことを希望した。新井氏はこれに同意し、生け花に対する知識と経験を活かすことにした。

2008年に就労ビザを取得すると、アトリエAtelier d’HANAを開いた。日本語では「花のアトリエ」という意味になる。新井氏は生け花のレッスン、生け花を使った空間デコレーション、パフォーマンスを行ない、「花の都」パリで生け花を披露していった。その過程で草月流一級師範も取得した。新井氏によると、生け花の大きな魅力は「いつでもどこでも誰にでも、そしてどんなものでも生けられる」ことだという。また、草月フランス支部副支部長にもなった。

新井氏の生徒のおよそ6割はパリ在住の日本人で、フランス人は4割だ。新井氏は「一般的なフランス人は生け花を単なる日本の伝統文化だと捉えていますが、生け花に触れたことのあるフランス人は、伝統文化でもある一方、現代アートの要素もあると捉えています」と語る。

8年間にわたるフランス生活により、日本人とフランス人の美的感覚の違いもわかるようになってきた。「例えば、フランス人は左右対称を好みますが、日本人は左右アンバランスを好みます」。最近は生け花で当たり前に使用する背の高い枝モノをフランスのお花屋さんでも取り扱うようになったことで、枝モノを使用することもブームになっているという。

フランス以外のサウジアラビアなどの国にも出向いて生け花のデモンストレーションを行なって人々を触発している新井氏だが、逆に自分自身が触発されることもある。新井氏は2010年の2月、国際交流基金の依頼でスーダンを訪れ、現地の人々に生け花を指導した。最初はスーダンでは生け花の師範や花材のほか、生け花自体に関する知識が不足していると思い込んでいた。

だが、確かに知識や花材が不足していたかもしれないが、スーダンの人々はそれを花や花を生けることに対するずば抜けた愛情で補っていた。その時のことを新井氏は振り返る。「スーダンの人々は生け花に慣れていなかったかもしれませんが、花を生けたいという気持ちを強く感じました。とても熱意があったのです。私は常々、生け花が世界中に広まれば素晴らしいだろうと思っていましたが、この経験を経てそのための力になることが私の使命だと強く感じました」。

パリで生け花の指導を始めて7年が経とうとしているが、新井氏は生徒たちの上達ぶりを嬉しく思っている。

目下のところ、新井氏はパリで展覧会を開催して自らの作品を披露することを熱望している。しかし、スーダンでの経験を振り返ると、アフリカなどで活動して世界中に生け花を根付かせることも夢だ。生け花を通した新井氏の活動がこれからも花開き、人々の人生を変え続けることは確かである。

 



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