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Highlighting JAPAN

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日本のヘルスケア

国民の健康長寿に向けて(仮訳)

黒川清博士インタビュー



日本は世界有数の長寿率を誇る国である。そのため、人口に占める高齢者の割合も増えている。高齢化が進む社会で、高齢者がいつまでも健康でいられるようにするため、2014年の「日本再興戦略改定版」に盛り込まれた医療改革では、国民の「健康寿命(=日常的に介護を必要としないで自立した生活ができる生存期間)」を延ばすことを目指している。政策大学院大学客員教授であり、科学技術担当の内閣特別顧問も務めた(2006~2008年)黒川清博士に、国民の健康寿命の延伸に向けた健康・予防の推進に関する政策や具体的な取り組みについて伺った。

日本の医療制度の特徴は何でしょうか。

日本の医療制度は、諸外国にはまれなフリーアクセス(患者が自分の望む病院や診療所で治療を受けられるという意味)と医療サービスの質の高さ、患者の医療費負担の低さと、概してとても優れています。また、こういった強みを活かし、途上国におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジを推進しています。これは全ての人が基礎的保健医療サービスを受けられることを目指すものです。

日本の病院で治療を受けた外国人はその医療費の安さと医療の質の高さに驚きます。国民の4人にひとりが65歳以上の高齢者であり、慢性疾患も増えているのにもかかわらず、国民一人当たりの医療費は低く、日本の医療コストはGDPのたった1割で、先進国の中でも低い方です。

日本の医療が直面している主要な課題は何でしょうか。

高齢者人口の増加にともない、寝たきりや認知症の数が増えていくことが予想されます。本人だけでなく介護者など周りの人のためにも、いかに健康に生きる期間を伸ばし、認知症などを予防できるかが重要です。

日本が誇るフリーアクセスや質の高いサービス、低い自己負担額という贅沢は、医療科学と技術が進化しながらも、日本の経済が安定して、成長し続けている1960年代に整備されたものです。しかし社会における高齢者の割合が急増したため、その構造はもはや維持できず、見直されなければなりません。

その課題に対しての解決策は何だとお考えですか。

健康寿命延伸戦略を具体化したもののひとつが、データヘルス計画です。これは、健康保険組合等が保有するレセプト(診療報酬明細書)や、健康診断データなどの情報を活用し、加入者の健康づくりや疾病予防、重症化予防を行う事業です。2015年度から部分的にスタートし、将来的にはすべての健康保険組合で計画を作成する予定です。

患者情報のデジタル化も、データを医療関係者の間で容易に共有できるようになるので、制度の効率化に役立ちます。さらに、この個人情報へのアクセスと所有権を患者自身にすることで、健康への意識を高め、自分たちの健康状態をより頻繁にチェックし、予防策を取るようになることにもつながるでしょう。

日本の医療の未来はどのようなものでしょうか。

急速に高齢化する社会において、認知症等の高齢者に多い病気がこれからますます問題となります。日本はこれらに対応するべく、まだまだやるべきことがあります。日本には質の高い科学研究技術がありますが、これ以外にも、たとえば健康管理にビッグデータを使うことや、介護ロボットを使った介護のイノベーションも検討するべきです。

もちろん高齢化と医療費増大は国際社会の共通課題です。そのため、日本のノウハウは他国のお手本となり、海外にも展開できるでしょう。




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