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Highlighting JAPAN

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連載 47の物語

徳島

ダイナミックな眺めと伝統の踊り(仮訳)




ダイナミックで幻想的な光景である渦潮は、ネイチャー番組以外ではあまり目にする機会がないが、徳島県に行けばそれを見ることができる。四国の東部、鳴門のすぐ沖では、瀬戸内海の海流が紀伊水道の力強い潮の流れとぶつかり、ブルーグリーンの渦をつくる。

船に乗って間近で見ることもできるし、徳島と淡路島をつなぐ大鳴門橋の下段につくられた「渦の道」という遊歩道からは鳥と同じ視点で見ることもできる。渦潮は潮の流れが変わるたびに現れ、春と秋、潮が海面を1メートル以上押し上げる時期に最大となる。鳴門の海流はもちろんただ渦をつくるだけではない。おいしい鯛も育てるのだ。魚好きは徳島のスダチ(ライムに似た柑橘類)を添えた鯛の刺身や、もっと伝統的な食べ方で、朴葉(マグノリアの葉)の上に乗せた鯛を石焼にしたものも味わえる。

徳島はいくつもの川が急峻な山や渓谷を削りながら流れる。一番大きな川は雄大な吉野川で、ほぼ県の西の端から東の端までを横切っている。徳島市近郊の河口から川を3時間ほど車で遡ると大歩危渓谷だ。ここではガラスの船底の観光船で、鹿やイノシシ、ニホンザルなどが住む急峻な断崖の間のターコイスブルーの水をゆっくりと下ることもできる。もうすこし冒険心のある向きにはラフティングも人気がある選択肢だ。

大歩危渓谷から少し足を伸ばせば、祖谷渓谷とかずら橋として知られるつるでできた吊り橋を訪れることができる。8世紀前、平家の落ち武者が祖谷に落ち延びた後につくったと言われるこの簡素な橋は、植物の蔓で作られており刀で簡単に断ち切ることが出来るので、追っ手の足を止めるためにつくられたと言われている。今日、訪れる人々は3つある吊り橋を渡ることが出来るが、もっとも行きやすいものは西祖谷にあり、安全上ワイヤーで補強されている。他の2つの橋は東祖谷の山深くにあって、つるだけでつくられている。渡るのは安全だが、氷の様に冷たい水が眼下に流れ、きしみ、揺れる橋を渡るのには冷静沈着な神経が必要だ。

徳島の年最大の行事は、お盆休みの間に行われる阿波踊りだ。この踊りは1587年の徳島城の完成を祝うために始まったと考えられている。今では城はその址だけしか残っていないが、踊りは生き続けた。8月12日から15日にかけ、徳島の中心街は毎年120万人もの人々がこの野外のお祭りで盛り上がり、日本中から観衆や踊り手が集まり日本版リオのカーニバルの様相である。「連」と呼ばれる踊り手の大きなグループが、特別に車を締め出した街の通りを、それぞれ男性、女性の踊りを踊りながら練り歩く。

踊りは眉山に登るロープウェイの乗り口近くにある「阿波踊り会館」で年間通して観ることができる。訪れた人は阿波踊りの歴史的な変遷などを学ぶことができ、また地元の「連」から来る踊り手や楽器奏者などとともに踊りの練習に参加もできる。徳島の人が言うように、「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損」というわけだ。

東京から徳島への飛行機は1時間ちょっと、大阪からはバスで2時間半ほどで日本の他のどこにも見ることの出来ない大自然が創りだした光景と忘れがたい伝統文化を体感することができる。

 



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