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Highlighting JAPAN

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日本のテキスタイル

300年のモダンセンス

日本のテキスタイルを元気にするブランド(仮訳)




2016年に創業300年を迎える中川政七商店は、「奈良晒(ならざらし)」と呼ばれる奈良地方で産出した上質な麻の晒し布を扱う問屋として商いを始めた。現在は多様なアイテムを取り扱うメーカーとして全国に約40の店舗を展開している。取り扱うブランドのなかで、特に30代以上の女性に強い支持を集めているのが、「日本の布ぬの」をコンセプトに手織り麻などを使った和の趣を感じさせる雑貨類を中心商品として展開する『遊 中川(ゆう なかがわ)』だ。

「当社はもともと茶巾を扱っており、昭和の時代に入り、仕覆と呼ばれる茶道具を入れる袋を作り始めたことから、茶道具全般を取り扱い始めることになりました。これが発展し、手織り麻を使った和の趣の小物を広く扱うようになったのが『遊 中川』のはじまりです」と話すのは遊 中川でブランドマネージャーを務める細萱久美氏だ。日本に古くから伝わる素材や技術、そして意匠を礎に、現代の感覚を融合させたスタイルの商品を提供している。

テキスタイル商品の中心となるのは麻。一本一本指で麻の繊維をより合わせてつないでいく「手績み」、そしてその糸を手仕事で丁寧に布に仕上げる「手織り」の製法で作られた麻布は、糸が持つ微妙なムラが独特の風合いを醸し出している。

「日本においてテキスタイルに関わる職人の目と手の繊細さ、出来上ったものに対する厳しさは世界のトップクラス。生産を海外に委託している部分もありますが、染色や縫製に関しては細やかな技術が求められる日本で主に行っています。そのクオリティの高さが、『遊 中川』に多くのファンを生み出しているのだと思います」と細萱氏は商品のできあがりに言及する。たとえば、奈良の特産である蚊帳生地の特徴をいかした人気商品の「花ふきん」。その色合いの繊細さ、縫製の技術の高さなどからリピーターも多く、ギフトとしても人気が高い。

また、近年は日本で生産量が減少しているテキスタイルの新アイテムとして、ヨーロッパでタペストリーなどに使われている「ゴブラン織」なども積極的に発表している。その理由は会社のビジョン、『日本の工芸を元気にする!』にある。現在は息を潜めている日本の技術、製品に光を当てることが、工芸の世界全体の原動力になるのだ。

「私たちの作りたいデザイン、製品を作ってもらうために、日本中の職人さん、工場とお付き合いをしています。靴下もデザインによって発注する工場を変えているんですよ。もちろん、一括して頼めば楽だし、低コストですむことも承知です。けれども、それぞれの工場、職人さんが得意とするものがあるので、それに沿ってお願いをすれば、よりよい商品ができあがるし、工芸の世界全体が活気づくと考えています」と細萱氏は語る。

海外からの視線も熱い。通信販売事業の売上は、海外からの注文が年々増加し、アジア圏のガイドブックや雑誌からの取材依頼も多く届いているという。また通信販売だけでなく、外国人観光客の訪問も増えているそうだ。先日、細萱氏はミラノの工場へ視察に行った。「あちらの職人さんたちも、事業規模の縮小や後継者不足という日本の職人たちと同じ悩みを抱えていることを知りました。もし、海外に進出するとなったら単にお店を出すのではなく、あちらの国の職人さんたちに励みになるようなビジネススタイルを考えたいですね」と話す。

「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを持つ中川政七商店の姿勢は、今後、日本、そして世界のテキスタイル業界が歩んでいく道に大きなヒントを与えるだろう。



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