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Highlighting JAPAN

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日本のテキスタイル

繊維の魔法

天然繊維を超える合成繊維(仮訳)


あらゆる服飾品に使われている合成繊維は、もはやファッションには欠かせない存在だ。特に、日本の合成繊維の技術力は海外でも評価が高い。中でも化学製品などを扱う東レは、欧州有数のテキスタイル素材展「ミラノウニカ(Milano Unica)2015 Autumn/Winter」に日本企業として初めて出展し、イベント参加者から大きな注目を集めた。またパリで毎年2回開催されている「プルミエール・ビジョン(Premiere Vision)」というファッション素材展においても毎回出展し、欧州のトップメゾンを唸らせる新商品を発表し続けている。

1926年に創業した東レは、「ナイロン」「ポリエステル」「アクリル」という3つの合成繊維を中心とした製造・販売を行ってきた。その中でも、絹のような風合いを持つポリエステル素材である「シルック(silky polyester fabric)」は、しなやかな感触と美しい光沢と色合いを有しており、洋装・和装の両分野における衣料用合成繊維のリーディング素材として国内外で広く使われている。

絹糸の断面は三角形に近く、これが光に当たって乱反射するので透明度の高い光沢を放つ。この独特な風合いを真似るため、1964年に東レは三葉断面という特殊な形状をした糸の開発・生産に世界で初めて成功した。90年代後半には天然の絹と同様のものが作れるようになり、その後は糸の細さや強度、色付けのしやすさなど次の段階における開発が進められた。今では天然の絹では表現できない質感も表現できるようになり、合繊ならではの新しい要素を楽しめるとあってファッション業界から常に高い関心を集めている。

現在では数え切れないほど多数の繊維素材を展開している東レだが、シルックと同様に世界を驚かせているのが、ナノファイバーと呼ばれる最先端素材だ。ナノファイバーとは、糸の太さが数十~数百ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートルの意味)の繊維である。ナノファイバーは従来の繊維と比較して非常に大きな表面積を持つため、従来の繊維が持つ性質に加えて高い柔軟性・吸着性・吸水性を可能にした。この技術を応用し、ナイロンやポリエステルなどをベースにした高感性素材や、高い通気性と軽量化を実現した機能性素材などのテキスタイルを発表している。

東レのナノテクノロジーによる繊維改質技術は、宇宙船内服にも採用されている。繊維そのものに消臭機能を有するこの素材は、洗濯や入浴ができない宇宙空間において、汗などによるアンモニア臭を光触媒によって素早く消臭し、快適な状態を保ってくれる。この技術は一般衣料への応用も進められ、夏場のビジネスシャツやスポーツ用のユニフォームとして採用され、販売されている。今後は介護・医療衣料での展開にも期待が集まる。

東レは日本以外にも中国やASEAN地域、欧州に生産拠点があり、世界各地で繊維の販売を行っている。メイドインジャパンの合成繊維は品質が高いという声に後押しされ、これからもグローバル展開を積極的に進めていくという。奇しくもシルックが登場した1964年は、前回の東京五輪が開催された年でもある。来る2020年の東京五輪に向け、トップアスリート向けの新素材やウェアラブル製品と連動した機能素材などを世界に向けて発信していく予定だ。今後も日本企業の高い技術力をもって実現する様々な合成繊維で世界を驚かせていくことだろう。



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