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Highlighting JAPAN

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地球温暖化対策

巨大な変化

関西国際空港の先進的な水素の試み(仮訳)




関西国際空港は、究極のクリーンエネルギーとして注目されている水素を取り入れた「水素エアポート」を進めている。世界に先駆けた環境先進空港へと進化する取り組みについて、新関西国際空港株式会社の中岡清貴氏に話を伺った。

「関西国際空港(以下KIX)は海を埋め立てた土地の上に建設されました。海という自然に、人工的に手を加えた施設として、当初から環境保全活動には積極的に取り組んできましたが、2012年には中期経営目標に再生エネルギーの活用が盛り込まれることになりました」と中岡氏は説明する。

水素は貯蔵、移動が容易で、燃やしても水しか排出されない。空港島内の風力と太陽光の発電設備を使って水素を創出し、大規模な水素エネルギーを空港施設へ導入し、フォークリフト(FL)など水素関連アプリケーション実用化のための実証事業を展開、そして世界最高水準の安全性と環境性を備えた「スマート愛ランド」の実現と、水素関連産業の世界市場の獲得をも目指した「水素グリッドプロジェクト」が急ピッチで進められている。このプロジェクトは岩谷産業、トヨタ自動車、豊田自動織機、三井物産、豊田通商、関西電力、大阪府や新関西国際空港で構成される官民連携の「KIXスマート愛ランド水素グリッド委員会」から成る。

2015年2月から水素インフラと燃料電池フォークリフト(FCFL)の開発実証・運用が開始される。「FLは大量の貨物を扱う空港には必要不可欠で、KIX全体で数百台のFLが稼動しています。現在はエンジン車と電力車との割合は半々ですが、FCFLを導入することにより、従来に比べCO2排出量削減効果が期待されるとともに、作業環境の改善が図られます。水素エネルギーを創出するためのインフラ環境を整備し、建物内でのディスペンサーによる水素燃料の充てんが可能になると、給油スタンドまで移動する手間が省ける上、充てん時間が3分程度、充電や電池交換なしでの連続稼動が可能となることから、作業効率が大幅に向上します」と中岡氏はいう。

すべてがFCFLになるのは数年先になる見込みだが、そうなった場合、従来のガソリン・電力使用と比較して数十%のCO2削減効果が見込まれている。FCFLの次は、航空機に貨物コンテナを配送するトーイングトラクターなどへの展開も計画されており、実現すればKIXのCO2排出量は大幅に減少することになる。

「また、空港島には燃料電池自動車と今後の計画にある燃料電池バスの水素充てんのための商用水素ステーションが整備されます。商用水素ステーションで水素充てんされたバスは、大阪国際空港とKIXとを連絡リムジンバスとして運行する構想もあります。将来的には、太陽光や風力といった再生可能エネルギーで水素発生装置を動かし、水素をタンクに貯めて燃料電池を発電し、そのエネルギーをターミナルビルに供給するシステムを確立したいと考えています。災害時に電力の供給が遮断されても、このシステムがあればエネルギー供給が可能となり、防災面でも大変重要なプロジェクトと言えるでしょう」。

さらにKIXでは、環境体感ルートを取り入れたり、空港見学ツアーのために水素ステーション内に水素に関する展示ブースを盛り込んだりすることも計画している。海外からも注目を集める「水素エアポート」のモデルケースとして、水素の安全性の一般認知を高める啓蒙活動を積極的に行っていくことも考えている。

「水素グリッドプロジェクトは、KIXを舞台に展開されていきますが、実際に動いているのは技術を持った企業であり、また環境省、経済産業省、内閣府といった各方面からのサポートも欠かせません。技術、資金、そして法整備のすべてが揃わないと、日本の進んだ水素技術を世界に発信し、数々の目標にスピーディに到達することは困難です。これからも官民一体となってさらに時間軸をもってこのプロジェクトを進めて行く必要があります」と中岡氏は力強く語った。




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