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Highlighting JAPAN

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防災

堅実な知恵

日本の地震防災教育をトルコへ伝授(仮訳)



トルコは日本と同様、世界有数の地震国として知られている。近年、甚大な被害をもたらしたのは1999年に発生したトルコ北西部地震で、犠牲者約1万7千人、家を失った人は約60万人に及んだ。その後もマグニチュード5~7クラスの地震が発生しており、防災対策はトルコ政府にとって重要な課題のひとつとなっている。事実、日本をはじめとする各国の援助も受けながら、公共施設の耐震化や地震に強い街づくりを目的とした再開発などが進められてきた。

そうしたインフラ面におけるハードの施策に加えて、トルコ政府が着目したのがソフトの対策、すなわち「防災教育」である。トルコ政府は義務教育を受ける全国の子どもたちと教員を対象に防災教育を実施し、正しい知識を授け、意識の向上を図ろうと考えたのだ。2008年9月、トルコ国民教育省は、地震多発国であり、防災教育が普及している日本にこの案件を要請。JICAが2010年10月~2014年7月の約3年半にわたってプロジェクトを実施した。

担当したJICA地球環境部の米林徳人氏に話を聞いた。「活動は3本の柱に基づいて展開しました。まずは教員に対する研修です。全国から約260名の教員を選出し、学校での防災教育や防災管理を行う上で必要な知識を学んでいただき、勤務校の同僚に対して習得した知識を研修指導してもらうことで、徐々にスキルを持った教員を全国に増やしていくことを目指しました。2本目の柱は、教員指導用のハンドブック制作や、防災教育をどのように授業に盛り込むかといった教材開発や授業案の提示です。授業については、生活、社会、理科など多くの教科で防災教育に関わるカリキュラムを提案しました。そうすることで子どもたちはいつもの学びの一環として、特段構えることなく正しい防災知識を身につけることができるからです。そして3本目は学校の防災管理です。災害時に有効な学校防災計画やガイドブックの作成、避難訓練、防災行事の普及、保護者や地域との協力体制づくりなどを行いました」。

活動は基本的にすべて日本で行っている防災教育やノウハウをそのまま持ち込む形で行われた。実行チームとして派遣されたのは、阪神淡路大震災で被災した兵庫県の自治体職員やNGO、防災や教育の専門家などである。例えば日本では地震発生後はすぐ外に飛び出さずに机の下などに入って身を守ること、非常用持ち出し袋の常備などは学校教育などにより常識になっているが、多くの国ではまだこのような状況になっていない。実行チームは、日本の経験をもとに、防災の基本知識を通じて、災害発生後の適切な行動によって身を守ることの重要性などを伝授した。また、神戸市のNGOによって行われた子ども対象の防災キャラバンも好評だったという。

「クイズなど子どもが親しみやすい内容で、楽しみながら防災についての理解を深めてもらえた手ごたえはあったようです。また、トルコのブルサ県の元知事が阪神淡路大震災の後に建てられた神戸の“人と防災未来センター”を視察した際(当時は内務省次官)、展示内容に感銘を受け、帰国後に県費で同様の施設をつくりました。地震の恐ろしさと同時に防災がいかに大切であるかを後世に受け継ぐ貴重な場となるわけで、非常に意義深いと思います」と米林氏はいう。

また、プロジェクト実行を通じて、トルコ国民教育省内に部局を横断して防災教育普及に取り組む組織ができたのは大きな成果でしたと米林氏は胸を張る。正しい防災教育を受けた子どもが増え、次世代にその知識を継承していくことに期待したい。



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