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科学と技術

見つめるだけで、ロックを解除(仮訳)

富士通の新しい認証システムによってスマホはもっとスマートに、そして安全になっていく

近年、高精度に“個人”を特定する仕組みとして“生体認証システム”の研究開発が進められてきた。指の腹で触れる指紋認証、手のひらをかざす静脈認証をはじめ、顔、声紋、筆跡などによる認証システムが使われている。

瞳の中心部の「虹彩」を利用した虹彩認証もそのひとつ。虹彩は瞳孔の外側にある環状部分のことで、個人によって模様が異なり、双子でも左右の目でも区別できる。指のようにケガなどで損傷を受けにくく、偽造しにくいという点も虹彩認証のメリットだ。

虹彩認証はオフィスの入退室管理や空港の出入国管理などで実用化されているが、それらはすべて限定されたエリアで使われるもので、かなり大がかりなシステムを必要とする。そのような中、富士通はスマートフォンに搭載できる虹彩認証システムを開発。2015年5月、世界で初めて虹彩認証機能「Iris Passport(アイリスパスポート)」を搭載した「ARROWS NX F-04G」を発売した。

「アイリスパスポート」の最大の特徴は、手が濡れていたり、汚れていたりしても画面を見るだけでロック解除できること。解除に要する時間は約0.6秒という一瞬だ。

ロック解除するときは、スマホ画面の上に組み込まれた小型赤外線LED照明を瞳に照射して、専用の赤外線カメラで虹彩パターンを取得し、スマホに登録してある虹彩データと照合する。

とはいえ、赤外線照明とカメラを組み込むだけでも容易なことではない。「スマホの画面上のスペースには、インカメラやアンテナ、レシーバ、各種センサーなどのさまざまな部品が搭載されており、かなり過密状態です。そこに赤外線照明とカメラを入れなければいけないというだけでもかなり苦労しました」と、開発を担当した先進開発統括部・マネージャーの北村卓也氏は振り返る。

スマートフォンがあらゆる環境で使われることも、開発における重要なポイントになったと北村氏はいう。「赤外線カメラが汚れている場合や、屋外での太陽光に含まれる赤外線の影響で読み取り精度が下がってしまうことがあります。また、まばたきや手ブレも影響するので、何枚かの画像を取得し、最適な画像で虹彩パターンを読み取るようにしています」。

さらに、画面を見た一瞬で虹彩を捉えられる角度になるよう赤外線照明とカメラの位置を調整したり、目の安全性を確保するために近接センサーを搭載し、赤外線照明に近づくと自動で照明がオフになる機能も持たせたりしている。

「アイリスパスポート」の機能は、スマホのセキュリティロック解除だけではない。パスワードマネージャーと連携して、ショッピングサイトやSNSへのログインも画面を見るだけでできる。ノートパソコンやタブレットなどにも搭載が検討されている。将来的には、車に乗った瞬間にドライバーが誰かを認識して、その人に合ったシートポジションの調節やBGM選択をするなどといったユニークな使い方も考えられるという。

個人情報の詰まったスマホをはじめ、銀行でもWEB上でも、あらゆるシーンで情報セキュリティが求められる現代。パスワードより安全で使いやすい生体認証は、ますます広がっていくだろう。




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