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青年海外協力隊50周年

スポーツの未来を創る国際協力(仮訳)

スポーツを通じて国際協力を行うことを目的のひとつとした「Sport for Tomorrow」。日本の体育教育ならではの良さを生かし、世界のスポーツ振興に大きく貢献している。

2013年9月の国際オリンピック委員会総会でのプレゼンテーションにおいて、安倍総理はスポーツ分野における日本の国際貢献策としてSport for Tomorrow (SFT) プログラムの内容を発表した。2014年から2020年までの7年間で、100カ国以上の国において1000万人以上を対象にスポーツの価値を広めるため、スポーツ分野での技術協力を推進していこうというものだ。青年海外協力隊員としてブラジルで2年間野球を教え、現在日本体育大学国際交流センターでスポーツを通した国際協力の推進に取り組んでいる黒木豪氏に話をうかがった。

「私自身は2009年から2年間、青年海外協力隊員としてブラジルで野球を教え、2013年にはWBCブラジル代表コーチも務めました。協力隊員募集に応募したのは、非常勤教員として中学校で体育を教えていた頃、狭い自分の世界を広げたいと思っていたタイミングで恩師が勧めてくれたからです。単身アメリカに留学した経験のある父に強く応募を後押しされたことも決心する大きなきっかけになりました」。

学生時代は野球に明け暮れていたという黒木氏にとって、協力隊員候補となってからの横浜での2カ月間の語学研修は、「生まれて初めて死ぬほど勉強した経験」だったという。ブラジルに着くとさらに3週間の現地研修があり、そののちに人口140万人ほどのインダイアツーバという町に派遣され、市の野球チーム専属のコーチとなった。

「『礼儀やマナーも含め日本の厳しい野球を教えてほしい』と言われていたので、自分が日本で教えられてきたやり方で指導をしたら、『厳しすぎる』とわずか2週間で14人のチームメンバーが3人に減りました。これは私だけでなく、協力隊の多くが悩むことだと思います。現地のペースに合わせて指導方法を変えるか、それとも自分の信念を通すかの選択を迫られた時、たとえ厳しすぎると言われても、自分のやり方についてきてくれる3人がいるのなら、その子たちのために指導を続けることを選びました。すると、その3人がメキメキと実力を上げるのを見た残りのメンバーたちもほどなく練習に戻り、結局チームはブラジル国内で3位になったのです」。これをきっかけにブラジル国内で評価され、U12、U16世代のブラジル代表コーチを経てWBCブラジル代表コーチをも務め上げることとなった。

日本体育大学国際交流センターでは、武道やスポーツ競技の国際的な親善試合を増やし、JICA短期ボランティアとして学生を海外へ派遣することで、SFTを推進している。

「現在は毎年8名がカンボジアの国立体育教員養成校に体育の指導に行き、また、18名がブラジルで国中を回りながら野球の指導をしています。さらに、ネパールでは体操を指導するプログラムも始まろうとしています。海外の体育教育は、レクリエーション要素が強い傾向がありますが、日本の体育教育は理論、骨格や科学、そして規律や問題解決スキルの向上と言った全般的な基礎を網羅しているところが特徴だと思います」。

現地の体育教育の弱い部分を日本人ボランティアが教える、という形の国際協力ができるのはとても誇らしいと語る黒木氏。SFTのさらなる展開が期待される。




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