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Highlighting JAPAN

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女性の活躍

白木夏子

輝くエシカル・ビジネス(仮訳)

世界中からの採掘・加工された材料をジュエリーブランド「HASUNA」が、責任を持って日本へとつなげる。。


白木夏子氏は日本のジュエリーブランドHASUNAの代表取締役を務めている。同社は東京における最先端ファッションエリアの表参道に拠点を置きながら、世界中の複数の大陸にまたがって金などの鉱物の採鉱所とコネクションを持っている。ファッションデザイナーの母を持ち、クリエイティブな環境で育った白木氏が、国際的な社会環境問題に取り組む会社を立ち上げるきっかけとなった出来事は、名古屋の短大に通っているときに訪れた。写真家・ジャーナリストの桃井和馬氏の講演を聞き、彼の語った途上国における生活環境の描写に心を打たれたのだ。

「これらの問題にすぐに対処しなければ、世界は崩壊してしまうと聞き衝撃を受けました」と白木氏は振り返る。2002年、白木氏は開発地理学 (途上国貧困地域の住民たちの生活水準や生活の質を考える研究分野) をキングス・カレッジ・ロンドン(英国のロンドン大学を構成するカレッジのひとつ)で学ぼうと決意した。その経験により、世界に対する彼女の理解は広がり、可能性のある道筋が日本を越えて世界に開かれているのを実感した。

白木氏は直接的な体験がもたらすことの重要性を確信している。大学在籍中、彼女はインドへ旅行し、雲母や大理石を採掘している村をいくつか訪れた。そこの住人たちは、インドのカースト制における最底辺で生まれたことにより、社会から差別され、蔑まれていた。彼らの生活は、教育の有無が意味をなさないような暗澹としたサイクルの中にあった。採掘所で働く以外は、生きる道が残されていなかったからである。村民たちは、いかに懸命に働こうと、たえず貧困を強いられていた。しかし、この採掘所から採られた鉱物は、私たちに便利さや贅沢をもたらす電子機器や宝石を作るために使われていた。「私たちは、これらのものを買うために大金を払っている一方で、鉱山労働者たちが困窮した生活を続けていることに疑問を覚えました」と白木氏は語る。

ロンドン大学を卒業した後、白木氏はベトナムの国連人口基金でインターンとして働き、その後2006年に帰国して、ビジネスをより深く理解するために投資ファンドの会社に就職した。そのビジネス経験をもとに、白木氏は2009年に株式会社HASUNAを設立し、自身のクリエイティブな素質とソーシャルビジネスを融合させるという念願を叶えた。この社名は、ジュエリー制作の過程と創造における純粋さのシンボルとして「蓮の花」にちなんでつけたものだ。

HASUNAのジュエリーを作るために使われる原材料は、ルワンダやペルー、ミクロネシア、コロンビア、ベリーズ、カナダといった国々の採掘場等から取り寄せている。白木氏は採掘所や販売業者を訪ね、エシカルな (倫理的に正しい) 活動を確約するとともに、前向きな変化をもたらすための指導も行っている。たとえば、パキスタン北部に住む貧困層の女性たちが働く宝石研磨工場では、白木氏は日本の百貨店等、世界のトップブランドが集まる場所で販売するため、一流の素材製作を共にしたいと語り、実践を経て女性たちの技術向上を促した。彼女にとって現地の人々と話すことは、彼らの置かれている状況を理解するうえで重要な行為だ。「国によって価値観は様々です」と彼女は語る。「私たちは、自分たちの価値観を単に他国に押し付けるわけにはいかないのです。関わる人たちの社会的状況や環境を理解し、共に良い影響をもたらしながら成長することが重要なのです」。

2014年、エシカルなダイアモンドや金などの原材料を使用するうえでの白木氏の献身性が評価され、Responsible Jewellery Council (責任あるジュエリー協議会) よりHASUNAにRJC認証が与えられた。これは、日本のジュエリーメーカーとして初の認証となった。この認証では、人権や労働者の権利、環境意識、責任ある採掘を含むエシカルな活動に関する厳格な基準を、各企業が満たしているかが検証される。白木氏はルワンダのストリートチルドレンを工房で職業訓練し自立を促す「仕事ノアル暮らし」(P18-19参照)などのNGOとも協力している。

非営利ボランティアグループの数々は、政府の手が行き届いていない問題に取り組むことができ、それらのグループとソーシャルビジネスの関係性はきわめて重大なものになってきている。白木氏自身も日本で開催される数々のセミナーで講演を行っている。それらの講演や著作により、若者たちが奮起して海外へ行き、日本を越えた場所にさらに多くの道が存在するということに気付いてほしいと白木氏は願っている。
「世界を体験し、理解することは、私たちに生きる強さを与えてくれます」と彼女は語る。

 



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