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Highlighting JAPAN

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日本のスポーツ

日本のスポーツの過去と未来(仮訳)

アメリカ人の教授が、メディア報道によって戦後から現在に至る日本人のスポーツ観がいかに形成されてきたかを研究している。

人々は、なぜスポーツを観戦するのだろうか――東京の早稲田大学でスポーツ科学学術院の教授を務めるリー・トンプソン教授によると、「スポーツはストーリーを伝えるものであるため、私たちはスポーツを好む。そして、それらのストーリーは、私たち自身についても語ってくれる」という。

トンプソン教授は、大学のゼミでスポーツとメディアにおけるスポーツの表現のされ方について教えている。その理由を彼は「私たちの大半は、メディアが語るストーリーに依存している」ためだという。このアメリカ国籍の教授は、日本でキャリアを確立した社会学者として、日本のスポーツにおけるメディアの影響と近代化の影響について調べている。

留学生として日本に滞在している間、公共放送局のNHKや2つのケーブルテレビ局でバイトしたことにより、トンプソン教授のメディアに対する興味がかき立てられた。その後、1950年代において相撲やプロレスのテレビ中継が誇っていた人気について研究し、その影響で彼はスポーツの描写におけるメディアの役割に着目し、それが大阪大学大学院における研究のテーマとなった。

さらに研究を進めるうち、トンプソン教授は、時代とメディアの変化に呼応した相撲の近代化について調査するようになった。彼は、江戸時代 (1603~1868年) の相撲が、現在のものとは大きく異なっていたことを発見した。「たとえば、場所を通しての成績を比較して個人優勝者を決めることをしませんでした。土俵上の一番一番の結果が全てでした。」と教授は話す。優勝制度は、読者の関心を高め発行部数を伸ばす目的で新聞社によって導入されたとトンプソン氏は指摘する。

封建時代から変わっていない伝統的な競技と思われがちな現在の相撲の様相は、その見た目に反し、いくつかの主要な部分は、20世紀入ってから導入されたものだということもトンプソン教授は発見した。例えば、神主の衣装に似た行司の服装が1900年代初頭に導入されたし、土俵の上の屋根は伊勢神宮と同じ「神明造り」だが、それは1930年代に取り入れられたということを教授は論じる。

近代化とそれに密接な関わりを持つ国際化は、日本のスポーツに良くも悪くも影響を与えた。トンプソン教授は、日本の伝統競技が世界に広まることに対して日本人が抱く複雑な心情に着目している。たとえば、「この国の人々は日本のスポーツが世界に普及してほしいと願っているが、同時にその勝者は日本人であってほしいとも考えている」。日本の国技と考えられてきた柔道や相撲のようなスポーツでは、現在、外国人選手たちが優位を占めている。(一例を挙げると、この10年近く、大相撲の本場所で優勝した日本出身力士は一人もいない。)

そうは言いながらも、国際化の流れは日本のスポーツ界を活気づけてもいる。日本人アスリートたちは野球やゴルフ、テニスといった欧米のスポーツで成功を収めており、日本に劣らない絶大な人気を海外でも博している。「日本人アスリートたちの国際的な活躍は、世界が持つ日本人選手に対する認識を一変させました」とトンプソン教授は語り、野球の名手・イチローのバッティングフォームを真似る外国の子供たちの姿を目にしたときのことを振り返る。「彼らによる影響が最もわかりやすく現れているのは、そういった光景なのです」。

海外における日本格闘技の人気は、韓国や中国をはじめとした各国の格闘技が普及してきたことから全体的に低迷しているとトンプソン教授は捉えているが、相撲の普及に関しては一定の成功を収めてきたと認識している。アマチュアの相撲大会を統轄している日本相撲連盟は、オリンピック競技として相撲が認められることを目標に掲げ、国際的に相撲の推進活動を続けてきたと教授は語る。

2020年の東京オリンピックは、トンプソン教授もメディアも現在注目を寄せている一大トピックだ。「日本のスポーツに関する話題はオリンピック一色になりつつあります」と教授は語る。「これから長きにわたってその成功の是非が話題になることになるでしょう」。それはファンにとってはもうひとつの楽しみなストーリーになる。




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