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Highlighting JAPAN

踊ることは生きること

福井県鯖江市のSBE80!は平均年齢80歳以上のアイドルグループ。健康体操に振り付けしたダンスを披露し、全国へ遠征する。若さを保ち、精力的に活動を続ける秘訣に迫った。

福井県鯖江市で平均年齢80歳以上の女性アイドルグループ、SBE80!(エス・ビー・イー・エイト・オー)がデビュー公演を行ったのは、2010年の春のことだ。当時85歳の宮下美智子さんをリーダーに、メンバー16人が氷川きよし(日本の若手演歌歌手)の『ときめきのルンバ』に合わせて踊りを披露した。「帽子はみんなで赤い厚紙で作ったの。踊りはみんなで2ヶ月も特訓したのよ」と、当時の写真を指して楽しそうに説明する宮下さん。

鯖江市役所健康課の理学療法士、山本進さんは「SBE80!は、もともと2005年に鯖江市老人クラブ連合会の生涯学習講座の仲間で転倒予防の『ドドンパ体操』を始め、啓発的な体操を普及するために市内の老人会や保育園などを回って披露していたことがきっかけ」と発足の経緯を語る。

活躍の場が広がり、レパートリーも増えたところで、せっかくだからと「SABAEの元気な80歳!」を意味してSBE80!を結成。全員一致で決めた曲に、山本さんがプロの立場から背筋、腹筋などを使い、体幹を強化する「体力を落とさないための体操」を振り付けた。デビュー以来「平均80歳のダンスアイドルグループ」として注目を受け、福井県内のさまざまなイベントから声がかかり、メディアからの取材依頼も殺到。なんと人気絶頂のアイドルグループAKB48との共演も果たし、現在では全国で年間30公演をこなす人気者だ。

宮下さんは現在90歳で、姿勢も歯切れも良い、素敵な女性だ。もともとママさんバレーを16年続け、老人クラブ連合会の世話役も務めるなど、社会活動にも積極的な、働く女性だった。遠征もある活動を高齢の今でも生き生きと続けられるのは「人の笑顔を見るのが楽しいから。できるだけ多くの笑顔が見たいから頑張ろう、次もやろう、と続けられるのよ」と若々しさの秘訣を教えてくれた。

山本さんいわく「『自分が楽しむ健康づくりから人を楽しませる健康づくりへ』がSBE80!の活動のモットー」。高齢者が健康のためにただ体操するのではなく、人前に出て見せ、観客の反応や人々とのやり取りの中で元気が生まれてくるのだという。

「エンターテインメントの力です。拍手やカメラやライト、全てがハリになる。80、90という年齢への先入観を覆されます。SBE80!の活躍を見て、平均年齢70代の後進グループ『本町小町』も生まれたんですよ」。

鯖江は眼鏡や漆などの伝統地場産業で栄える街だ。市役所勤務20年の山本さんは「鯖江市民は人を育てるのが上手。先進的なもの、変化に対する柔軟さや、お客さんに喜んでもらうサービス精神もある」と鯖江の風土を説明する。「だから高齢者世代と若い世代がお互いに認め合い、敬意がある。高齢化社会では、先達がたどってきた人生に敬意を持つことが大切。人生の先輩に様々なことを教わりながら、肩を並べて共に未来を語り、そして下の世代の我々は未来を託されるのです」と行政人としての思いを語った。

「90なんてまだまだ、目標は100まで踊ることよ。そのためには、骨が弱くなって骨折などしないよう、転ばないようにしなければね」と笑う宮下さん。毎朝5時には規則正しく目覚め、ラジオ体操の後に畑仕事をし、夜は一杯のワインを嗜むという。

山本さんの「氷川きよし君が紅白(紅白歌合戦。NHKが1951年から大晦日放送している国民的大型音楽番組)に出る時、一緒に踊ってと呼ばれるかもしれないし、AKB48とも再会しなきゃいけないから、頑張らないと」との冗談に、宮下さんは「呼ばれたら喜んで行きますよ。今が一番楽しいね」と、満面の笑みで返した。