Home > Highlighting JAPAN >Highlighting Japan February 2016>ロボット技術

Highlighting JAPAN

スマート、ユニーク、ワンダフル

「変なホテル」は、業務の多くをロボットが行うというユニークさで、国内外から注目を集めている。その経営方針の柱には日本の未来を見据えた人件費削減と省エネルギー化への取り組みがあった。

国内外から多くのゲストを迎える長崎県佐世保市にあるテーマパーク「ハウステンボス」に、昨年7月「変なホテル」は開業した。

変なホテルに到着すると、まずエントランスで目に入るのがクロークロボットだ。通常は倉庫でダンボールの積み上げ作業などをする産業用ロボットは、49個のクロークボックスに利用客の荷物を収納する仕事をする。さらに歩を進めると、レセプションロボットがチェックインの手続きを助けてくれる。女性型ロボットは客と視線を合わせ、微笑んだり、時にはウインクしたりもする。恐竜型ロボットは国籍を問わず老若男女に大人気だ。

変なホテル総支配人の大江岳世志氏はいう。「女性型のレセプションロボットはそのリアルさに怖がるお子さんもいるくらいです。ヒューマノイドなので、人と同じ滑らかな動きを機械の動作音をさせずに実現し、微笑みなどは、顔面部分の空気の圧縮と膨張で自然な動きを実現しています。今年3月にもう一体のロボットが来るタイミングで、現在の日・英2カ国語対応から、中・韓を加えた4カ国語対応にする予定です」。

ロビーにはホテルやハウステンボスの案内をするコンシェルジュロボットや、客室まで案内するポーターロボットもいる。移動の多いポーターロボットは客にぶつからず、また後ろからついてくる客を置いてきぼりにしないよう、人感センサーで距離を保っている。ホテルの庭では芝刈りロボットが働き、充電が足りなくなると自ら充電ステーションに戻っていく。

全ての客室には「客室ロボット」(愛称ちゅーりー)がおり、ハウステンボスで一日過ごして帰ってきた客が、ベッドから起き上がらなくても、声に反応して室内灯の調整やモーニングコールをしてくれる。「性別、年齢を問わずどんな声にも反応するよう精度を向上させました。ちゅーりーからなぞなぞを出したりする部屋もあり、一人で宿泊しても寂しくないと好評です」と大江氏はいう。

変なホテルは既存のホテルの概念を覆す世界初のローコストホテルとしても、新しいホテルの在り方を提案している。「5つ星ホテルがひしめくハウステンボスですが、星の数にふさわしいサービスを維持するには人件費と光熱費が負担になります。そこで、これまでとは全く逆の省エネ型スマートホテルを作ろうというのが変なホテルの発想でした。ロボット導入と空調設備を輻射パネルにすることで、人件費と光熱費を大幅に削減しました。客室のアメニティは最小限でロビーの自販機で購入可能にし、デラックスルーム以外テレビはなくタブレットで映画などを視聴します。72室のホテルだと通常は22人前後のスタッフが必要ですが、同ホテルの常駐スタッフは半数以下の10名です」。

ロボット導入は人件費削減に加え、エンタメ性とサービスの質の均一化を可能にするメリットがある一方、緊急時のサポートという不安要素があるが、変なホテルでは客室のタブレットでの人間スタッフとのスカイプ通話とホテル内パブリックスペースの多くのモニターカメラを人間が24時間体制でチェックすることで解消している。サービス業において人でなくてはできないこと、ロボットでできることを精査し、振り分けているのだ。

「今後は5つ星ホテルのようなホテルサービスと、変なホテル型の二極化が進むだろう」と大江氏。東京オリンピック・パラリンピックまでに東京にも変なホテルをオープンさせることを目標に掲げ、ロボットと人間がそれぞれのかたちの「おもてなし」で利用客を楽しませている。

<参考情報 2016年1月現在>
客室
スタンダードタイプ
広さ21.32㎡
標準宿泊価格39,960(税サ込/2名利用時1室料金)
清掃やベットメイクは別料金