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Highlighting JAPAN

リオの足となる鉄道

日本の企業グループはリオデジャネイロなどで、最新の鉄道システムの開発、改善に取り組んでいる。

リオデジャネイロ市中心部では、大規模な都市再開発が進められている。今年7月下旬に一部区間での営業運転が開始されたばかりのLRT(Light Rail Transit)は、開発の一環として建設され、地元の人だけではなく、オリンピック・パラリンピックを訪れる観光客の足になることも期待されている。LRTは上部に架線は無い。車両はエアコンの効いたバリアフリーである。路線延長28キロのうち、年内に26キロが完成する予定であり、1日の乗客数は約26万人が見込まれている。

LRTの建設・運営は、三井物産、西日本旅客鉄道(JR西日本)、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)の日本グループが、ブラジルの企業と組んで行っている。

「LRTの開通により、国内線の空港やリオデジャネイロ近郊鉄道(SuperVia)、長距離バスのターミナルなど、従来ばらばらだった交通機関が段階的に結ばれます。リオデジャネイロ市内で深刻な問題となっている交通渋滞の緩和や、二酸化炭素の排出削減にも貢献します」と三井物産の柳沢勇人氏は言う。

日本グループはSuperViaの経営改善にも取り組んでいる。リオデジャネイロ市内と郊外とを結ぶ総延長270キロメートルのSuperViaは、1980年代前半頃には1日100万人以上の通勤客を運んでいたが、バスや自家用車の増加、設備の老朽化、メンテナンス不足に伴う事故や故障の多発により、1996年には利用客は1日15万人にまで減少した。1998年、公営であったSuperViaに民活が導入された後、現地企業が経営再建を始め、2014年から三井物産が、2016年からJR西日本、JOINが加わった。

経営改善の具体的な対策の一つは、故障や脱線を防止するための線路や車両の保守点検、維持管理の強化といった安全性の向上である。そのための人材育成として、JR西日本の技術者をリオデジャネイロに派遣し現地の技術者への指導を行ったり、現地の技術者を日本に招いてJR西日本の施設で研修を実施したりしている。さらに、鉄道の衝突や過速度を未然に防止するための自動列車停止装置(ATS)の導入も進めている。

「日本で研修を受けた技術者は、非常にやる気に満ちてブラジルに帰り、いかに日本のシステムをブラジルに導入できるかということに熱心に取り組むようになります。ブラジルには約160万人の日系人が住んでおり、勤勉で勉強熱心な彼らに対するブラジル人の信頼は非常に高いです。そのお陰もあって、私たちもとても仕事がやりやすいです」と柳沢氏は言う。

この他にも、老朽化した線路や車両の交換、エアコン付き車両増による快適性の確保、輸送能力の増強などを進めている。その結果、現在、1日の利用客は70万人にまで回復している。将来的には1日170万人を目指している。

日本グループはさらに、首都ブラジリアに近いゴイアニア市でLRTの建設・運営を行っている。現在運行されているバスの輸送能力が限界に近づいているため、LRTによって輸送力の増強を図っている。また、サンパウロ市では、サンパウロ地下鉄6号線の建設・運営事業も行っている。沿線の通学需要に応えるとともに、交通渋滞の改善を図っている。

「日本の方法を押しつけるのではなく、お互いに納得する改善を実施しながら、この国に合った方法を探していくことが大切です。今後も、日本の鉄道運営に関する経験や技術を最大限に活用し、現地の社会インフラの向上に貢献していきます」と柳沢氏は締めくくった。