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Highlighting JAPAN

 

日本の地球温暖化対策


日本政府は2016年5月、温室効果ガス排出の大幅な削減を目指した「地球温暖化対策計画」を閣議決定した。経済産業省の審議会の委員として計画の策定に携わった山地憲治・地球環境産業技術研究機構(RITE)理事に、地球温暖化防止に関する日本の対策、国際貢献について話を聞いた。

2015年12月、フランスのパリで開催された COP21で採択された「パリ協定」をどう評価されていますか。

パリ協定は、温室効果ガス(GHG)排出削減のための2020年以降の国際的な枠組みとして、主要排出国を含む世界のほとんどの国が参加する非常に画期的な協定です。また、日本が20年前から主張していた、各国のGHG排出削減・抑制目標の「プレッジ&レビュー」も合意されました。

さらに、長期目標として、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求することも決まりました。21世紀後半には、人為的なGHG排出と、その吸収の量を同じにすることも目指しています。この長期目標の達成に向けた全体的な進捗を、2023年から5年ごとに評価することも行われます。このように、パリ協定では、各国が自主的に定めるGHG排出削減・抑制目標と、世界全体で達成を目指す長期目標とがセットになっていることも、私は高く評価をしています。

パリ協定の合意を踏まえ、日本政府は5月に地球温暖化対策計画を閣議決定しましたが、日本の温暖化防止対策のポイントをお教え下さい。

2015年7月、日本は気候変動枠組条約事務局に、GHG排出削減目標として、2030年度のGHG排出を2013年度比で26%削減するとした「約束草案」を提出しています。地球温暖化対策計画では、これを中期目標として、その達成に取り組むと明記されています。また、長期目標として、2050年までに80%のGHG排出削減を目指すとしています。地球温暖化対策計画は、これらの目標を見据えて、様々な分野における対策が盛り込まれています。

日本の地球温暖化対策において、今後重要な役割を果たすのが省エネルギーです。日本は1970年代の石油危機の後、産業界が徹底した省エネを進めた結果、我が国全体のエネルギー効率は大幅に改善されました。今後は、産業界のみならず、家庭、運輸、ビルといった人々の生活と密接に関わる分野の省エネも、徹底的に進める必要があります。

また、2011年3月の東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故によって、人々の原子力発電所の対する不安は残っていますが、温暖化対策の更なる推進のためには、そうした不安に向き合い、安全性を十分確保した上で、現在停止している原子力発電所の再稼働を順次、進める必要があります。さらに、再生可能エネルギーの推進、石炭火力発電の効率向上も重要です。

地球温暖化対策として、今後どのような技術開発が重要でしょうか。

政府が2016年4月に、2050年を見据えた革新的技術戦略として策定した「エネルギー・環境イノベーション戦略」では、今後、重点的に開発すべき技術分野が特定されています。例えば、AI(人工知能)、ビッグデータなどを活用して社会全体としてエネルギー消費効率を最大化するエネルギーシステム統合技術です。その他、エネルギー効率を向上させる超軽量・耐熱構造材料、リチウム電池の限界を超える次世代蓄電池、新素材・新構造の次世代太陽光発電、排ガスから分離・回収した二酸化炭素を有効利用する技術などが挙げられています。

日本は世界の地球温暖化対策に、どのような貢献をすることができるでしょうか。

日本のGHG排出が世界に占める割合は現在2.8%です。日本だけがGHG排出削減しても、地球温暖化防止に与える影響は限られています。日本の役割は地球温暖化防止に向けて様々なイノベーションを創出し、それを世界に広げることです。

既に、日本は開発途上国との間で二国間クレジット制度(JCM)を始めています。また、日本は2014年から「Innovation for Cool Earth Forum」 (ICEF)を開催しています。こうした国際会議で、核融合発電や宇宙太陽光発電など、実用化には長い時間がかかるものの、効果の大きいイノベーションについて議論することも重要です。

気温上昇の原理や、それが地球に与える影響については、科学的な不確実性が指摘されます。しかしながら、不確実性はあるものの、現実に地球温暖化は起こっているのです。人類はこれまでも地球環境の変化に適応してきましたので、過度に悲観的になる必要はありませんが、今、人類の未来のために私たちは行動しなければなりません。