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Highlighting JAPAN

 

創造的復興に向けて


4月に発生した熊本地震は、熊本県、大分県に大きな被害を及ぼした。しかし、地震から約半年が経ち、被災地は復興に向けて歩んでいる。特に被害の大きかった熊本県の蒲島郁夫知事に復興の現状を聞いた。

熊本地震から約半年が経ちますが、熊本県の復興状況についてお聞かせ下さい。

地震後、最大で人口の約1割にあたる18万人超が避難所などに避難していましたが、9月末には仮設住宅の建設が9割以上完了するなど、被災された方々の住まいの確保についても概ね区切りがつき、現在は本格的な復旧・復興へとフェーズが移っています。

経済を再建するための様々な支援策も実施しています。例えば、被災した中小企業が施設を復旧するための費用の4分の3を、国と県で支援しています。また、金融機関による低金利融資や借入金の返済猶予も行われています。こうした支援は効果を上げており、地震が原因で倒産する企業は非常に少なく、経済は立ち直りつつあります。

熊本での観光の状況はいかがでしょうか。

地震後、九州の観光支援のために政府が創設した助成制度「九州ふっこう割」によって、通常よりも大幅に安く熊本県を旅行することが可能になっています。これにより、旅行者数は大きく回復しました。私は、旅行に来ていただくこともボランティアの一つだと思っています。さらに多くの方に熊本を訪れていただきたいです。

熊本県のシンボルであり、観光地としても人気の高い熊本城の復旧については、熊本市や国と連携して、しっかりと取り組みます。天守閣とその周辺の公園部分は、2019年に熊本県で開催されるラグビーワールドカップ、女子ハンドボール世界選手権大会を見据え、早期の復旧を目指します。石垣や櫓などは概ね20年の計画期間で修復します。そうした修復の過程を一般の方が見学できるような取組みも展開します。

地震後の非常に厳しい状況の中、熊本県民にとって何が励みとなりましたでしょうか。

熊本県には全国の非常に幅広い年齢層から、心温まるご支援、励ましの声をたくさんいただきました。また、復旧支援のために多くのボランティアの方に来ていただきました。さらには、台湾、中国、韓国などの海外からもご支援をいただきました。私を含め、熊本県民はこうした世界中の皆様からのエールに励まされ、感謝の気持ちでいっぱいです。

熊本県民は地震を通じて、日常の生活がいかに大切であるか、同じ震災を経験したことによる絆の深まり、感謝の気持ちを忘れないことを学びました。それにより、人々が精神的に強くなったと感じています。

8月に策定した「復旧・復興プラン」の中に掲げられている「創造的復興」とは、どのようなものでしょうか。

熊本を単に地震の前の姿に戻すのではなく、より良い状態にすることが「創造的復興」です。創造的復興のための取り組みの一つは、海外との交流をさらに拡大することです。例えば、環境省は今年7月、訪日外国人観光客を国立公園に誘致するため、取り組みを集中的に行う8つの国立公園の一つに「阿蘇くじゅう国立公園」を選定しました。阿蘇のアクセスや公園施設をさらに充実させることで、阿蘇カルデラの雄大な自然を、より多くの海外の方々に楽しんでいただけるようにしたいです。さらに、阿蘇くまもと空港での国際線増便、八代港での大型クルーズ船寄港を増加させるための整備などを進め、九州におけるアジアのゲートウェイを目指します。

熊本県の人気キャラクターの「くまモン」も、地震後、熊本のPR活動で国内外を走り回っていますね。

くまモンは熊本県民だけではなく、多くの日本人に愛されています。くまモンが全国規模で人気を集めることに成功した主な理由は、シンプルなデザインであることです。また、言葉を発せず、ジェスチャーだけで感情表現することも魅力になっています。さらに、熊本県のPRにつなげるため、キャラクター使用料を無料にしています。昨年のくまモン関連商品の売り上げは1,000億円を超え、今年はさらにそれを上回ると予想されています。商品の売上げを通じて、くまモンが全国で知られるようになれば、熊本県にとってのメリットは非常に大きいのです。最近は、くまモンの存在価値をさらに高めるため、海外でのPR活動に力を入れており、台湾、香港、中国本土、タイで大変人気が高まっています。このように、世界的に知名度を増すくまモンには、今回の熊本地震からの復興の象徴として、元気な熊本を国内外にアピールし、熊本の魅力を伝えてもらいたいと思っています。