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Highlighting JAPAN

 

日本の国連加盟60周年


明石康元国際連合事務次長インタビュー

60年前日本が国連に加盟したとき、国連総会場の傍聴席にいらっしゃいましたね。

はい、私は日本の国連加盟という記憶に残る場面に立ち会いました。1956年12月18日のことでした。当時私はアメリカに留学していました。重光氏[当時の日本の外務大臣重光葵]の演説に深く感銘を受けました。重光氏は日本が1933年に国際連盟を脱退してから、23年の不在期間を経て再び国際社会に復帰できる大きな喜びを表すとともに、その責任を果たす日本の決意を強調していました。

その瞬間は日本にとってどのくらい重要でしたか。

最初、日本は国際社会における国連の役割を多少美化していました。それは、日本が[第二次大戦後]数年もの間、旧ソ連による拒否権行使などのために加盟できなかったことや、アジアにおける永世中立国を夢見たことを考えれば無理もありませんでした。日本が国連の理想と現実とに折り合いをつける時期もありました。しかし、日本は最初から非常に活動的でしたので、すぐに安全保障理事会の非常任理事国になりました。日本はこれまで11回非常任理事国に選出されました。これは、他のどの国連加盟国よりも多いことです。日本はずっと国連の非常に勤勉な加盟国であり、安全保障理事会のみならず国連総会を含む諸機関においても良い影響を与えようと努めてきました。たとえば1990年代に日本は政府開発援助(ODA)拠出額で10年中9年間トップでした。私は日本の努力は数多くの国々に認められていると思っています。日本は、自国のさまざまな利益や、米国やその他先進国との強力な同盟関係と非核保有国としての思いを両立させようと努めてきました。

カンボジアにおける平和維持活動[1992-1993年]での、ご自身の経験についてお教え下さい。

アメリカとソ連の間の冷戦が1989年頃に終わり、ポスト冷戦の時代が始まりました。その中で、日本をはじめ多くの国々は、国連に平和と発展の中心になってもらいたいと考えていました。その最初の挑戦の一つが、カンボジアでの平和維持活動でした。まさに日本がその一部をなす東アジアにおいて、平和を維持するという国連の壮大で非常に複雑かつ多元的な取り組みにおける責任者を務めることは、私にとって名誉なことでした。日本は日本人の人命を犠牲にすることになりましたが、カンボジアにおける活動を継続しました。そして日本は徐々に、アジアだけでなくアフリカ、中東、カリブ海諸島でも国連の活動に取り組むようになりました。1990年代には国家間の衝突よりも異宗教間や国内の衝突が数多く発生し、国連はまったく予想していなかった新たな国際社会の様相の中で奮闘せざるを得なくなりました。国連の平和維持活動は、ソマリア、ルワンダ、そして、私がカンボジアでの活動後に派遣されたユーゴスラビアで多くの新たな課題に直面しました。国連がもっと軍事的手段を持てるよう活動方法を変える必要がありました。そのために、日本のような国々は予想外の新たな状況に直面します。日本は、国会における最近の激しい議論で見られるように、こうした状況に合わせようとしているところです。ただ、こうした問題は早晩解決され、日本は平和維持活動の分野でも、開発分野でも、また人権や環境といった他の数多くの分野でも、国連の取り組みにおいて今までどおり非常に活動的で重要な役割を担うことができると私は思っています。

この60年間で日本の国連内での評判は変わりましたか。

日本は国連加盟国の中で、大国と小国の中間あたりに位置します。日本は誠実な仲介者として、また発展途上国に対する支援や援助の提供者として、そして国際政治における熟練者として、中心的役割を担おうと努めています。日本は世界の調整調停役でありたいと思っています。予防外交分野では、国連平和構築委員会の委員長としてみせたように、紛争発生前、日本は誠実な仲介者であり、紛争後にも平和の構築者として努力してきたことを認識されるべきです。ただ、紛争が起こっている最中には、日本は合憲性について世論が分かれ、議論が続いているという諸事情から、さらに大きな役割を果たすことには控えめです。

日本が安全保障理事会の常任理事国になることについてどう思われますか。

国連内の合意あるいは大多数、つまり3分の2の過半数の同意を見いだすべく、辛抱強く努力を継続する必要があります。日本が安全保障理事会の非常任理事国に選ばれているのも並々ならぬ努力を行ってきたうえでのことです。日本が安全保障理事会の常任理事国の一員になれれば、その方がずっと望ましいと思いますが、その実現は今後も簡単ではありません。安全保障理事会が有効に機能するには、その規模が小さい必要があることも、その一因です。私は国連の一員としての日本の未来に希望をもっていますが、同時にさらに強力で有意義な国連の実現には、日本と日本人の側に、もっと大きな役割を果たすための覚悟が必要だと考えます。つまり人的資源、財源、アイデア、そしてイニシアチブです。ただ、そうした貢献を実りあるものとするためには、脚光を浴びようとせずに行動する必要があるでしょう。