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Highlighting JAPAN

光の贈り物

日本企業によって開発、寄贈されているソーラーランタンの光が世界中の無電化地域や被災地を照らしている。

世界には電気のない暮らしを送る人々が今でも12億人もいるといわれる。電気の照明を使うことができないこれらの人々は、夜間に勉強も内職もできず、出産や治療には大きな危険が伴う。灯油ランプは明るさが不十分であり、その煙は深刻な健康被害をもたらす上に火事の危険も伴う。さらに、CO2が 排出されるという環境面の問題もある。このようなさまざまな課題の解決を目指して、パナソニック株式会社は、太陽光発電による小型照明器具を無電化地域に届ける「ソーラーランタン10万台プロジェクト」を進めている。

「2006年に日本で当社の太陽光発電施設『ソーラーアーク』を見学したウガンダの大臣から、灯油ランプの黒煙に苦しむ自国の人々を太陽電池で助けて欲しいとリクエストされたのが製品開発のきっかけとなりました」とパナソニックの「10万台ソーラーランタンプロジェクト」リーダーの星亮氏は語る。「このリクエストを受けて、誰もが簡単に使えるソーラーランタンの開発が始められました。ランタンは2009年に完成し、500台がウガンダに寄贈されました。また、同じ年、1000台がスマトラ地震の被害を受けたインドネシアに寄贈されました。その後、2011年4月にはタンザニアに1000台、2012年3月にはカンボジアに2000台のソーラーランタンを寄贈しました。これら寄贈の受益者からの報告で、ソーラーランタンが夜間の教育、保健医療などの活動に役立っていることを認識し、2012年度にソーラーランタン10万台プロジェクトをスタートさせたのです」

パナソニック製ソーラーランタンは、小さなソーラーパネルと蓄電池、LEDライトで構成されている。晴天下で6時間充電すると約6時間、弱光で使えば90時間点灯する。

2015年に国連は「持続可能な開発のための2030アジェンダ」を採択した。そこで掲げられた17項目の持続可能な開発目標(SDGs)には、貧困の撲滅、健康と福祉、質の高い教育、ジェンダー平等の実現、不平等の解消、経済基盤の整備、地球環境の保全などが盛り込まれている。

国連は、2030年に目標を達成するためには、各国の公的機関はもちろん、民間企業との連携も不可欠と考えている。高い技術力を有する日本企業への期待も高い。

「アジア諸国では主にNPO、NGOに対して寄贈していますが、アフリカでは国連機関に寄贈するケースが多いです。アジアと比べてアフリカは、当社にとって寄贈に係る諸条件の困難性が高いこともあり、国連機関の協力と支援を受けながら寄贈を進めることが多かったのです」と星氏は言う。

パナソニックでは、SDGsの達成に貢献するために、寄贈先からの報告に注意を払っている。そうした報告のなかで、星氏がもっとも成果を実感している分野の一つが教育だ。貧困に苦しむ無電化地域では、家事の手伝いや勉強の遅れから学校に通わなくなる子どもが多い。ソーラーランタンにより夜間勉強できるようになった子どもは成績が向上しドロップアウトもなくなる。学校を卒業すれば就労の機会も増えるため、ランタンの灯は貧困から脱する希望の灯りとなっている。また、学校の教師が夜間ソーラーランタンを活用して翌日の授業の準備をすることにより、教育の質の向上が図られている。さらに、カンボジアにおいては、成人向けの識字教育にソーラーランタンが活用されている。ミャンマーやフィリピンにおいて、夜間の出産に立ち会う助産師がソーラーランタンを活用することによって、出産時に母親と新生児が被るリスクを大幅に軽減している。

災害支援

寄贈されたソーラーランタンは、主に開発援助的な目的で使われているが、大規模自然災害などが起きた際の緊急支援に使われることもある。10万台プロジェクト立ち上げ前には、2011年の東日本大震災の被災地に約4800台を寄贈。10万台プロジェクトの下でも、2013年にフィリピンを襲った超大型台風30号(ハイエン、ヨランダ)の被災地に約1000台を寄贈した。また、2014年と2015年にはエボラ出血熱が流行する西アフリカのギニア、シエラレオネ、リベリアに対して合計3240台を寄贈、夜間に治療を行う医療チームの活動を支援した。

パナソニックは、同社創立100周年を迎える2018年までに世界の無電化地域へ10万台を寄贈する計画だ。2016年11月現在、寄贈したソーラーランタンは19カ国向け、約67,000台にのぼる。

「理想はソーラーランタンが必要とされない、送電網が行き渡った社会ですが、その実現にはまだしばらく時間がかかると思います。すべての人々が平等に電気を使える日が来るまで、電気のないくらしを送る人々が直面しているさまざまな課題の解決にソーラーランタンが役立ってくれれば、という思いでプロジェクトに取り組んでいます」と星氏は語る。