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Highlighting JAPAN

災害リスクを軽減する:日本とUNISDRの連携

日本は自然災害の経験から蓄積された防災の知見を活かし、国連と協力して世界の防災・減災を推進する取組みに貢献している。

世界の多くの国では毎年、地震、台風、洪水、干ばつなどの自然災害により、人的、経済的な被害が発生している。2016年10月に国連国際防災戦略事務局(UNISDR)が発行した「Poverty & Death: Disaster mortality 1996-2015」によれば、1996年から2015年の20年間に135万人の命が自然災害によって失われたという。そのうち半分以上が地震・津波で、残りが台風など気象に関連する災害によるものであった。また、被害者の多くが低所得国、中所得国の人々である。

「開発援助を必要としている多くの国が、自然災害に対して脆弱です」と兵庫県神戸市にあるUNISDR駐日事務所代表の松岡由季氏は語る。「それゆえに、持続可能な開発の観点からの防災への取り組みが非常に重要です。防災の視点に欠けた開発を行い続けると、既存のリスクだけでなく、新しいリスクを生み出すなど、いつまで経っても災害リスクを軽減することができません」

2000年に設立されたUNISDRはスイスのジュネーブに本部を置き、災害リスク軽減のためのグローバルな枠組・戦略・政策の推進と提言を行っている。日本はUNISDRと連携し、国際的な防災への取り組みを推進している。その一つが、国際的な防災戦略を議論する国連防災世界会議である。第1回国連防災世界会議は1994年に神奈川県横浜市で開催された。そして、2005年の第2回国連防災世界会議は、1995年の阪神淡路大震災で深刻な被害を受けた兵庫県神戸市で、2015年の第3回国連防災世界会議は、2011年の東日本大震災で大きな津波被害を受けた宮城県仙台市で開催されている。185カ国から6500名以上が参加した第3回国連防災世界会議では「仙台防災枠組2015-2030」及び「仙台宣言」が採択された。これらには、日本が提案した、防災投資の重要性、多様なステークホルダーの関与、「より良い復興」などの考え方が取り入れられた。また、日本は2015年から2018年の4年間で40億ドルの資金協力、4万人の防災・復興人材育成を含む「仙台防災協力イニシアティブ」を発表している。

「日本は、地理的な特性上、地震、津波、台風、洪水、火山噴火など、多くの自然災害と戦ってきた長い歴史があります」と松岡氏は語る。「そのなかには厳しい経験も多くあります。しかし、だからこそ、日本には、防災の分野で培った豊富な知見や技術が蓄積されており、それを国際社会へ発信し貢献することができるのです」

日本では、阪神淡路大震災、東日本大震災の経験を踏まえ、堤防を含むインフラなどのハード面だけではなく、教育や意識啓発などのソフト面の対策も、さらに重視されるようになった。例えば、東日本大震災では、東北地方で古くから伝わる「津波てんでんこ」(大きな地震が起きた時は、津波が押し寄せてくるので、誰の指示を待つことなく、各自が一刻も早く高台に逃げて、自分の命を守れという教え)を守ることで多くの命が救われた。

2015年12月には、日本がリーダーシップを発揮して多くの国と共同提案した「世界津波の日」に関する決議が国連総会本会議において全会一致で採択された。この決議には、11月5日を「世界津波の日」として制定すること、早期警報を通じた迅速な情報伝達、伝統的知識の活用などが盛り込まれている。「世界津波の日」は、1854年11月5日、和歌山県を襲った大津波の際、村の指導者の一人が自ら収穫した稲わらに火を付けて人々を高台に誘導し、村民の命を救ったという「稲むらの火」の逸話に由来している。

UNISDR駐日事務所も、こうした日本の経験を国内外で広げるために様々な活動を行っている。例えば、同事務所は、今年11月25、26日に高知県・黒潮町が主催した「『世界津波の日』高校生サミットin黒潮」を共催した。会議では世界30カ国から集まった350名以上の高校生たちが防災・減災についての議論と発表を行った。

「障がい者、高齢者、子どもや女性など、社会的に弱い立場にいるとされてきた人々を、積極的な防災のアクター(行動主体)として認識し、包摂的な社会をつくることは、レジリエントな社会を築くことにつながります」と松岡氏は言う。「仙台枠組の実施をはじめ、今後、ますますUNISDRと日本の連携は重要になっていくでしょう。UNISDR駐日事務所としても、そのさらなる連携のための橋渡しをしていきたいと思っています」