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Highlighting JAPAN

あらゆる人に選ばれる病院

東京都立広尾病院では、日本人の患者と同様に、外国人の患者も進んだ医療サービスを受けることができる。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、選手や大会関係者の受け入れ先となる「オリンピック病院」の選定が進められている。これは国際オリンピック委員会(IOC)の求めに応じたもので、選手村や競技会場から近く、かつ最新の医療設備を備えた10の総合病院が選定されることになる。

東京都立広尾病院も、そうしたオリンピックへの対応が期待されている病院の一つだ。同病院は救急医療、災害医療、島しょ医療の基幹病院であると同時に、外国人が多く住む渋谷区に立地するため外国人患者の割合が高く、2016年10月からの4ヵ月間で50ヵ国以上、約350名の外国人患者が来院している。

同病院では外国人患者への対応に力を入れており、院内の標識やフロアマップのほとんどは日本語と英語で表示されており、一部は中国語と韓国語でも表示されている。同病院は2016年3月から日本政府観光局(JNTO)のホームページの「訪日外国人旅行者受入れ可能な医療機関」リストに掲載され、2016年7月には厚生労働省から「外国人患者受入れ拠点病院」に認定されている。

「当院は外国人の患者さんへの対応能力を上げるよう取り組んでいます」と企画担当の西山泰子氏は言う。「3年前からは全職員を対象にした語学研修を始めました。ワークショップやセミナーを開いたり、DVDで勉強したりもしています。外国人の患者さんに積極的に対応しようという意欲に溢れているのが当院の強みです」

2016年4月からは英語と中国語の院内通訳4名と外国語医療コーディネーターの看護師1人が就くようになり、体制がさらに強化された。

「外国人の患者さんは通常、言葉が通じないことに不安感を抱かれています」と外国語医療コーディネーターで看護師の岡内真由美氏は語る。「私の役割は、外国語での支援が必要な外国人の患者さんに対して診察や治療を説明し、彼らを助けることです。何よりも患者さん本人に状況を理解して頂きながら治療を進めることが大切です。いろんな部署が連携して、国籍を問わず患者をサポートする『患者支援センター』を設けているのも当院の特徴です」

広尾病院の小児科では12年前から外国人患者向けの英語のオンライン問診システムを導入している。小児科部長と経営企画室長を兼任する山本康仁医師は東京都からの依頼を受け、外国人患者向けのシステムの開発をさらに進め、タブレット端末と互換性のあるシステムを作り上げた。

「これは医師と外国人の患者さんに対して治療を行う時に、誤解を無くすように設計されています。東京都では目下、医療の現場にタブレットを活用できる最先端の環境を構築しようと計画しています。その意味でも、このシステムの開発は非常に重要な案件です」と山本医師は語る。

患者はまずタブレットの画面に表示される「What brought you here?」という問いに対し、画面上で該当する症状にチェックを入れていく。患者が画面に表示される症状を特定するごとに、次の問診が自動的に現れるようになっている。例えば、具合が悪い場所は、表示された人体の絵に触れて指し示すことができる。現状の対応言語は英語だけだが、今後は多言語化されていく予定である。現在、電子カルテと連動させるなど、改良を加えた最新システムの試験が進んでいる。

「外国人の患者さんにも日本人の患者さんと同様の医療を受けていただきたいというのが、私たちスタッフ全員の思いです。そのベースは整ったので、これからはよりブラッシュアップしていく段階です」と岡内氏は言う。「“あらゆる患者さんに選ばれる病院”を目指して、全員で努力を重ねていきます」