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「21_21 DESIGN SIGHT」は東京のど真ん中で常に変化し続ける展示プログラムによって、未来のデザインの可能性に焦点を当てている。
東京都港区にある東京ミッドタウンは、面積約68,900㎡の敷地に、商業施設、文化施設、オフィス、ホテル、住居などを集約した複合的機能をもつ都市空間だ。その「ミッドタウン・ガーデン」の中に、鳥が翼を広げたような建物がある。名称は「21_21 DESIGN SIGHT」。展示、ワークショップ、トークイベントなどを通し、デザインを見て知って体験する場として開かれている。
2003年、朝日新聞に、デザイナーの三宅一生による「造ろうデザインミュージアム」と題する寄稿文が掲載された。デザインの持つ可能性を力強く説く呼びかけに、日本を代表するデザイナーたちと企業が賛同し、デザインを重要な要素とする街づくりの構想が進んでいた東京ミッドタウン内に、デザイン文化の拠点を作ることが決まった。
2007年、21_21 DESIGN SIGHTは、所蔵品を持たず、今を活躍するデザイナーたち自らが展覧会ディレクターを務める、世界初の試みのデザイン“サイト”として誕生した。建築を担当したのは安藤忠雄。三宅一生の服づくりの基本理念である「一枚の布」に呼応するように一枚の鉄板を折り曲げたような鉄製の屋根が特徴となっている。建物容積のおよそ8割が地下という構造は、公園の広い視界をさえぎることなく、遊歩道を散策してきた人々を穏やかに迎える。
21_21 DESIGN SIGHTのアソシエイトディレクター・川上典李子さんは「21_21 DESIGN SIGHT は、「sight=見る」としてのサイトです。英語で優れた視力のことを20/20 visionというそうです。その視力にもう1をプラスして、もっと先を見よう、違った角度で見ようという意味が込められています」と話す。
常設展のない21_21は、その都度テーマを決めながら、これまで35回におよぶ展覧会を開催してきた。三宅一生、グラフィックデザイナー・佐藤卓、そしてプロダクトデザイナー・深澤直人の3人のディレクターに加え、外部からはデザイナー、アーティスト、エンジニアや職人、さまざまな分野の専門家も招き、あるいは企業や教育機関と協働して、多彩なテーマを取り上げてきた。「デザインは人間に根ざした活動であることを、できるだけ幅広く伝えたい、というのが21_21の企画の基本です。企画会議は毎月行っています。21_21のディレクターたちが世の中の動きを受けとめてその時々に思っていることを意見交換しながら、21_21から何を発信したいかを議論します」と川上さんは話す。
これまでの企画を振り返ると、「水」「骨」「祈り」など、デザインと無関係に思えるテーマも並ぶ。21_21は、ものごとの見方をデザインの視点で探る“サイト”なのだということが分かる。「2016年には31回目となる『土木展』を開催しました。私たちが普段意識することのない都市インフラを支える土木という仕事に焦点を当てたものです。21_21に来館するまでに通ってきたビル群が、帰るときには違った景色に見えたらいいな、と思いました」と川上さんは言う。「ここに来たら思わず会話が始まる。新しい何かを考えるきっかけになる。21_21はそういう場所でありたいと思っています」
10周年の節目となる2017年の最初の企画展は「アスリート展」だった。元400mハードル選手の為末大がディレクターの一人に加わり、身体機能を極限まで引き上げるアスリートの動きに迫った。現在開催中の「『そこまでやるか』壮大なプロジェクト展」では、不可能と思われる壮大なプロジェクトに挑み続けるクリエイターたちを紹介している。2017年10月20日からは、人類学者の中沢新一を展覧会ディレクターに迎え「野生展:飼いならされない感覚と思考」を開催予定だ。
誕生から10年、人々の視野を広げてきた21_21 DESIGN SIGHTは、人々が規定する常識や限界を超える力が人間自らにあることを示して、次の10年を歩み始める。
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