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Highlighting JAPAN

ビジネスチャンスが広がる日本市場

投資先としての日本は高コストでリターンが望めないという見方は、すでに過去のものとなった。日本の対内直接投資の変化を紹介する。

日本の最近の投資環境の変化を数字で見ると、対日直接投資残高は2010~2013年まで横ばいで推移した後、2014年に初めて20兆円を超え、2016年度には27.8兆円で過去最高額を更新した。対日投資残高がGDPに占める率も、2010~2013年に横ばい(3.5、3.6、3.6、3.6%)で推移した後、2014年に4.6%、2016年には5.2%まで上昇した。しかし、対内直接投資残高の対GDP 比でみると、日本は世界198ヶ国・地域中189 位(2015年末)となっており、国際的には低い水準にとどまっている。

こうした状況に対して、政府は、2013年6月に閣議決定された日本再興戦略において「2020 年における対内直接投資残高を35兆円に倍増させる(2012 年末時点17.8 兆円)」という非常に高い目標を掲げている。

日本の投資環境の変化について、日本貿易振興機構(JETRO)の前田茂樹理事は4つの要因があると説明する。

「マクロ経済環境から見れば、経済の安定成長と円安による割安感という2つの要因があり、ミクロ面では、政府の投資環境改善策や自治体の誘致努力、さらに日本経済のグローバル化に伴い、日本企業の行動が外資を受け入れる方向に変化しているという2つの要因があります」

つまり、マクロ面では、1990年代以降の長引く景気低迷や円高基調などにより、日本は儲からない市場というイメージがあったが、「2012年12月以降、日本経済は着実に成長、パフォーマンスも向上し、外国企業の見方も『日本は停滞していない』というものに変わってきています」と、前田理事は最近の日本に対する認識・理解の変化を強調する。

一方、ミクロ面にも変化がある。例えば外国企業が対外投資を決める際の判断基準の一つに、対象国の法人実効税率がある。日本は2013年度の37.00%から2016年度の29.97%まで3年間で約7%引き下げた。東京のオフィス賃料は高いと言われてきたが、今ではシンガポールや香港などと比較しても高くはない。政府は、ビザ要件の緩和や世界最速級のグリーンカード発給、日本法令の外国語訳の拡充などの具体策を打ち出している。

前田理事は「大規模投資を行っている外資系企業9社を対象に、様々な相談窓口の役割を担う政府のカウンターパートとして当該企業の主な業種を所管する省の副大臣等を指定する『企業担当制』の導入など、先進的な施策を展開しています」と投資環境改善に向けた取り組みを説明する。

この制度(外国企業の日本への誘致に向けた5つの約束)は、JETROが海外の先行事例をもとに提案し、2015年3月、関係閣僚で構成される対日直接投資推進会議で決定された。5つの約束のもと、日常生活における言語の壁の克服や、海外から来た子弟等の教育環境の充実などの施策が実施されている。翌2016年5月には「グローバル・ハブを目指した対日直接投資促進のための政策パッケージ」が同様に対日直接投資推進会議で決定され、規制・行政手続きの簡素化、「日本版高度外国人材グリーンカード」の創設、「外国人留学生の就職支援」などの施策が実施されている。

こうした対策などにより外国企業誘致は拡大している。2003~2016年度におけるJETROの誘致成功案件は1,579件で、特にこの5年で倍以上に伸びた。内訳を見ると、医薬品や医療機器分野を中心にR&D拠点設置が拡大している。技術の高さ、技術者や研究者の多さ、知的財産制度の確立など日本の優れた研究環境、さらに規制緩和の進展が背景となっている。

前田理事は「日本企業のコーポレートガバナンスの強化や日本版スチュワードシップ・コードの策定などについて投資家から高い評価を得ていることも追い風となっています」と語る。

JETROは、さらに対日投資を拡大するため、この数年、国内外スタッフ・アドバイザーを増やし「攻めの営業」へと大転換を図っている。また、海外事務所で対日投資を担当していた現地スタッフ6人を日本で勤務させ、「国別デスク」として母国の対日投資案件へのサポートを強化している。さらには外国企業1,000社に個別に担当者をつけ、ビジネスからスタッフの生活面まであらゆる支援を行っている。

OECD加盟国の対内直接投資収益率(対内直接投資収益率=当期直接投資収益支払/対内直接投資期首期末残高×100(%))で、日本は2014年の4.9%、2015年の6.9%から2016年には10.0%で第三位と改善し、金融保険サービスを除くサービス部門では17.8%となった。

この数字は、海外企業にとって、対日投資リターンが高いことを示す数字だ。日本の対内投資推進策が日本市場におけるビジネスチャンスを広げている。