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Highlighting JAPAN

信頼関係の構築

伝統企業が主導する取組によって、東京の丸の内と大手町エリアが国際経済拠点として発展しようとしている。

東京駅と皇居の間に広がる丸の内及び大手町エリアは、約4,300社の企業が集積する、日本のビジネスと金融の中心地である。このエリア内に約30棟のビルを所有、管理する三菱地所株式会社は、1890年に当時の三菱財閥が政府から現在の丸の内エリアの払い下げを受けオフィス街の建設を計画して以来、一帯の開発を手掛けてきた。現在、同社はこのエリアのビルの建て替えだけでなくビジネスの仕組みづくりにも取り組んでいる。2007年4月には海外成長企業や国内先端ベンチャー企業向けビジネス支援施設である『EGGJAPAN』を、2016年7月には同様の施設では国内最大規模となる『Global Business Hub Tokyo』を開設し、また、2017年2月には、金融サービスのビジネス創出を支援する『FINOLAB(フィノラボ)』を開設している。

EGG JAPANは東京駅前の新丸の内ビル、Global Business Hub Tokyoは地下鉄5線が乗り入れる大手町で2016年に竣工した大手町フィナンシャルシティ グランキューブ内にある。どちらも明るく開放的なフロアに、2名から20名程度を想定した小割りのオフィススペースがある。24時間利用可能で、机、椅子、キャビネット、電話機やネットワーク通信設備も完備されており、入居企業はすぐに仕事を開始できる。

三菱地所の街ブランド推進部テナントビジネス開発支援室のユニットリーダー、島田映子さんは「多くの入居企業が1~2年で事業を拡張するので、その際に別のフロアや一般オフィスを紹介するという不動産事業の側面もあります。日本の大企業が集まるこのエリアに海外企業等の誘致や新たなビジネス創出の支援をすることで、協業を促しエリア全体の活性化につなげて国際競争力を高める目的があります」と施設運営の意義を説明する。

現在、入居企業は、B2B向け製品やサービスを提供するIT関連業種が多く、アメリカの企業が約半数、日本の企業が4割、残り1割がアジアとヨーロッパの企業である。

両施設ともに寛げる共用スペースがあるほか、最大200名を収容する多目的スペースもあり、入居企業による新製品やサービスの発表会、三菱地所の主催する懇親会、セミナーなどのイベントも開催されている。入居企業にとっては、顧客候補の紹介、広報活動など、三菱地所の豊富なネットワークをいかした質の高い支援を受けられることが大きな魅力となっている。

「両施設とも、運営側の私たちと入居企業の方がとても近い距離で対話できることが特徴です。これはお互いの信頼関係と将来的な繋がりを築くためにとても良いことだと思っています。私たちは、“丸の内から事業の拡大が始まった”という新しい企業の成長物語が、この施設でたくさん生まれることを期待しています」と島田さんは話す。

一方、三菱地所が株式会社電通、株式会社電通国際情報サービスと3社協業で運営する『FINOLAB』では、金融にテクノロジーを組み合わせたフィンテック領域のスタートアップを支援している。1959年竣工当時の貴重な大理石の床などは残しつつ大胆に共用部の改修工事を行った大手町ビル4階にあり、利用者の要望を随所に取り入れたコミュニティ形成型コワーキングスペースで、全室に指紋認証式の入退室管理システムを取り入れるなど、金融関連の業務を行う上でのセキュリティも万全になっている。現在入居する約8割は日本のスタートアップだが、FINOLABでは、フィンテック先進国のイギリスをはじめとする世界各国のフィンテック拠点との連携を進め、相互に拠点を利活用できる体制をとっている。また、FINOLABの趣旨に賛同する大企業、高度な専門領域の有識者集団(Finovators(フィノベーターズ))がメンターとして加わり、研究開発や提言など、スタートアップ企業やエコシステムの発展をサポートしている。

三菱地所のビル営業部統括、堺美夫さんは「FINOLABでは、金融から派生するものの、金融領域に限定せず、様々な領域で私たちの生活を便利にする新しい仕組みやサービスの研究・実証・開発に取り組んでいます。そのために、スタートアップ企業、大企業、専門家に加え、行政、そして生活者も巻き込んだ新産業のエコシステムをこの東京、大手町から作り出すことをFINOLABの目的としています」と話す。

明治近代化以降、このエリアの発展を支えてきた大手老舗企業が、先進的で革新的な知見をもつ国内外の企業に新たなビジネスを模索する場所を提供することによって、丸の内と大手町は、新たな価値を創造する国際経済拠点へと前進することが期待される。