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Highlighting JAPAN

国際女性会議WAW!

2017年11月1日~3日、4回目となる「国際女性会議WAW!(WAW!2017)」が「変化する世界におけるWAW!」をテーマに東京で開催され、国内外から集まった参加者が女性の活躍について活発な議論を行った。

WAW!は、World Assembly for Womenの略称で、「女性が輝く社会」の実現を重要政策の一つに掲げる日本政府により2014年から毎年開催されている国際会議である。今年も国際機関や各国政府の幹部、科学者、企業経営者、ジャーナリスト、さらには大学生など多彩な参加者が集い、女性活躍のための起業、技術革新、無償労働、安全保障、メディア、災害などの多様なテーマについて、講演やパネル・ディスカッションが行われた。

3日間の会議を通じて多くの参加者が同様に指摘したのは、労働市場への女性参画が社会と経済に与える影響の大きさ、持続可能な開発目標(SDGs)が目指す「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある世界の実現の重要性だった。開会式と閉会式で基調講演を行ったクリスタリナ・ゲオルギエヴァ世界銀行最高経営責任者は、ジェンダー1平等について三つのポイントを指摘した。女子の就学と学問の追究、資金へのアクセスと会計知識の習得・訓練、そして”HeForShe (SheForHe)”の組織的な有言実行、すなわちジェンダー平等へのコミットである。その上で、彼女は、具体的な事例として途上国における世界銀行の女性支援を紹介し、女性の経済的エンパワーメントが、子供たちや家庭、コミュニティーに対し、いかに大きな波及効果をもたらすかを強調した。

 参加者の多くは、日本の女性参画に関する取組が不十分な点を指摘しつつ、近年の改革の成果を評価した。特に、日本にとって長年の大きな課題であった女性の就業率の改善である。女性が働きやすい環境作りに向けた政府の積極的な取組により、女性の就業者数はここ5年ほどで約150万人増加した。日本の女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は、結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し、育児が落ち着いた時期に再び上昇するという、いわゆる「M字カーブ」を描くことが知られているが、この解消に向けた取組の成果と言える。(参照

就業率の問題に加え、女性の起業に関しても活発な議論が行われた。女性の起業は女性の自立と同時に、従来にはなかった付加価値の高い商品や利便性の高いサービスを生む可能性が指摘されている。会議で俎上に上ったのは、途上国の女性起業家が資金アクセスや法制度などの障壁に直面している問題だった。今年7月のG20ハンブルグ・サミットにおいて、世界銀行内に基金が設置された「女性起業家資金イニシアティブ」は強力な支援策の一つである。日本政府も5000万ドル(約55.7億円)の支援を表明しており、WAW!2017に出席した河野太郎外務大臣は「基金が円滑に運営され、世界全体で『女性が輝く社会』が実現するためにも、日本として最大限の協力をしていく」と明言した。

その他の参加者として、起業家として知られるイバンカ・トランプ・アメリカ大統領補佐官、水産会社や航空会社を起業したスシ・プジアストゥティ・インドネシア海洋水産大臣が自らの経験を紹介し世界の女性が輝く社会に向けた力強いメッセージを送ったほか、次代を担う若者たちが、スペシャル・セッション「若者が考える女性活躍の未来とは」に登壇した。若者向けメディアや学生組織の運営など様々な活動を展開する6名の若者が、女性も男性も若い世代がより良い社会に向けて自らの考えに基づき行動することの重要性などに熱弁をふるった。セッションを聴講していた女子高生が「与えられた選択肢から自分の行動を選ぶのではなくて、自分の意思で決め行動したい」と意見を発表すると会場は大きな拍手に包まれた。

最終日には、安倍晋三内閣総理大臣が登壇し、女性活躍推進のための国内外での取組や実績を紹介し、「世界中に『女性活躍』のネットワークを広げていく。世界中の女性たちが立ち上がれば、貧困を始め、世界の様々な課題は、きっと解決できるはずです」と語った。

WAW!2017の成果として、参加者から出された主な提言が「WAW!2017東京宣言」として取りまとめられ、女性活躍を推進するために「教育・訓練を通じて、意識改革を行っていく」、「データを収集・分析し、情報公開していく」、「人工知能(AI)や情報通信技術(ICT)を積極的に活用していく」など5つの柱が盛り込まれた。

5回目となる来年のWAW!で、こうした提言に基づく取組や新たな課題が話し合われることになる。WAW!は、女性活躍推進による世界の変化に一石を投じた。継続は力なりという言葉の通り、参加者を始め関係者の認識共有と発信による影響の広がりが期待される。

(注)
1 ジェンダーとは、ある時代のある社会が、そこに所属する男性・女性にとって「ふさわしい」とする役割、行動、性質など、生物学的な性差に付加された社会的・文化的な性差のこと