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Highlighting JAPAN

伊勢志摩:神秘と荘厳の地

日本の最も神聖な神社と美しい海岸線を誇る伊勢志摩国立公園は一年を通じて非常に素晴らしい観光スポットである。

三重県伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町にまたがる伊勢志摩国立公園は、公園内に伊勢神宮を有し、特徴的な海岸線の景観と豊かな森林環境を誇る日本有数の海の国立公園である。温暖な気候と穏やかな海に恵まれ、海洋生物や植物が数多く生育している。この公園を象徴するのは、志摩半島のリアス式海岸である。特に岬や入り江の多い英虞(あご)湾の複雑で壮大な地形とそこに浮かぶ60余りの小島が織りなす光景は絶景である。英虞湾の賢島は、2016年5月のG7伊勢志摩サミットの主会場となった。

英虞湾をはじめ、志摩半島一帯にあるいくつかの湾では、「あおさ」と呼ばれる青海苔、牡蠣、アコヤガイなどの養殖が盛んで、英虞湾だけでも養殖筏(いかだ)の数は3千から4千余りに及ぶといわれている。湾内に浮かぶ筏が一帯の海岸の美しさに独特の趣きを加えている。

その筏の中には、この地域を代表する真珠の養殖筏がある。伊勢志摩の真珠といえば、海に潜って採取したアコヤガイに核入れして海に戻す海女が有名である。今では技術が発達し海女に頼ることはなくなったが、観光事業として鳥羽湾の小さな島で海女の実演が続けられている。

鳥羽湾の西、伊勢市の二見浦は、夫婦岩で知られる二見興玉神社が観光客の間で人気となっている。5月から6月にかけて、二見興玉神社から眺められるのは夫婦岩の間から昇る朝日で、晴れた日にはその向こうに富士山も見える。11月から1月にかけては夫婦岩から昇る月が一幅の絵のようである。江戸後期を代表する浮世絵師、歌川広重(1797-1858)も、「冨士三十六景 伊勢二見か浦」として日の出を描いている。

かつて参拝者は、伊勢神宮に参詣する前に禊(みそぎ)をするため二見浦に立ち寄っていたが、現在では、鉄道を利用して直接伊勢神宮に参拝するのが一般的で、これとは別に二見浦を訪れることもしばしばある。

伊勢神宮は伊勢志摩国立公園における陸のシンボルであり、古代から続く天照大御神(あまてらすおおみかみ)信仰の中心で、衣食住と産業の守り神「豊受大御神(とようけのおおみかみ)」を祀る豊受大神宮(外宮)と「天照大御神」を祀る皇大神宮(こうたいじんぐう)(内宮)の2つを中心に125の宮社で構成されている。伊勢神宮の敷地は約5,500ヘクタールに及び豊かな自然に恵まれている。参拝者は、神社の広大な森林歩道を自在に歩き、春には桜、初夏の新緑、秋には紅葉などを満喫できる。

伊勢神宮は、外宮から内宮の順に参拝するのが習わしとなっているが、近年は、鳥居をくぐり、五十鈴川に掛かる美しい日本様式で木造の宇治橋を渡って内宮へ参拝するところから始まる。

宇治橋を越え、参拝者は天照大御神を祀る「正宮」へと神聖な森に包まれた境内を進む。晴れた日には木漏れ日に清らかな空気を感じ、雨の日には森の息吹を感じることができる。年間参拝者は1,000万人前後に及ぶ。

江戸時代には「一生に一度は伊勢参り」と言われ、伊勢神宮参拝が庶民の間で人気となった。豊作や商売繁盛に「お蔭さま」と感謝をささげる参拝は「お蔭参り」とも呼ばれ、人気は明治期まで続いた。大群衆が詰めかけた年が4回ほどあったと言われ、1771年には約200万人、1830年には約500万人が伊勢神宮を参拝したという記録がある。それぞれ2,600万人、2,700万人という当時の日本の推定人口から考えると人気のすごさが分かる。

お蔭参りで栄えた門前町の街並みを再現したのが、宇治橋からほど近い「おかげ横丁」である。当時の建物を移築又は再現し、老舗の味や名産品を取りそろえ、歴史や風習を知ることもできる観光スポットして人気を博している。

伊勢志摩国立公園は今日に至るまで、四季折々の美しい自然、厳かで静謐な伊勢神宮が大きな魅力を形作っている。