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Highlighting JAPAN

 

世界をつなぐ-持続可能な未来に向かって


2017年11月15-17日、東京にある日本科学未来館(以下、「未来館」)で、第二回目となる世界科学館サミット(Science Centre World Summit。 以下、SCWS)が開催された。SCWSとは三年に一度、世界各地域の科学館の専門家と関係者が一堂に会する国際会議である。未来館館長でありSCWS2017の国際組織委員会委員長を務めた毛利衛氏に話を伺った。

SCWS2017を成功裏に終えられおめでとうございます。SCWS2017の意義とテーマについて教えてください。

ありがとうございます。SCWS2017の成功は、多くの人たちが3年以上という時間をかけて準備した成果です。サミットを開催する意義は、これまでとは異なる科学館の行動指針を策定し、科学館の役割を確立することでした。気候変動、エネルギー問題、感染症、サイバーセキュリティの脅威などのグローバルな課題はすべて科学技術に関連していますが、こうした課題が急速に増えています。これらの課題を解決するには、一般の皆さんに、もっと科学技術に関わっていただくことが不可欠です。世界の多くの科学館は、個々人の行動を変え、来館者と共にこうしたグローバルな課題に重点的に取り組むまでにはなかなか至っていません。科学館の新しい役割は、グローバルな課題の解決に貢献することなのです。

SCWS2017は、「世界をつなぐ―持続可能な未来に向かって」というメインテーマを掲げました。98の国・地域から多様な経歴を持つ828人がサミットに参加し、このイベントで開かれた多くのセッションの中でアイデアを出し合いました。サミットの期間中は、一般市民の幅広い参画の強化、そして科学館が地球規模の課題や人類の持続可能性に共同で対応するための行動計画の策定を目指し、「東京プロトコール」に関する戦略について議論しました。

「東京プロトコール」のポイントと意義を教えてください。

この美しい地球を宇宙から見ると、国境や境界線などは存在せず、そこにあるのは多くの生物だけだということが容易に分かります。私が最も感動したのは、生物を覆い、保護し、生かしている、薄くて壊れやすい大気圏の様子を見たことでした。私たちは、私たちが知る限り、宇宙で唯一、生命を維持できる場所である地球の持続可能性を保証しなければなりません。グローバルな課題は今や、生物を脅かすものになっています。人間は協力してそれらの課題を解決しなければなりません。そのため、サミットに先立って世界の科学館ネットワークは2017年6月に東京プロトコールを策定し、署名したのです。明確な目標を定めたプロトコールの行動要請によって、すべての参加者、つまり世界の科学館の専門家やステークホルダーに焦点を当てたサミットが実現しました。また、このプロトコールでは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を達成するために必要な創造性と理解を促進するプラットフォームとしての、科学館の新たな役割を宣言しています。

SCWSは、科学技術に留まらずあらゆる分野との強固な協力体制を構築することを目標に掲げていますが、それについて、具体的に教えてください。

未来館の設立以来、私たちは、ビジネス、教育、芸術などの他分野と同様に、科学技術は文化の一部なのだと強調してきました。個々のカルチャーが独自の知恵を発達させ、今度は文化全体の持続可能性に貢献します。これが長きにわたって国家の役に立ってきたのですが、今、人類はグローバルな課題に直面しています。2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)は、持続可能性に向けて取り組む際の課題を解決する手助けになるような17個の目標を定めています。SCWS2017のパネルディスカッションでは6つのSDGについて話し合い、科学館コミュニティは直ちにそれに基づいて行動できるようになりました。

SCWSの成果を具現化するために求められる世界の科学館の役割について、考えを教えてください。

国際科学会議(ICSU: International Council for Science)1は、すべての人々に関与してもらうための「フューチャー・アース・プロジェクト」を提案しています。私たちは、そのような活動の中心的役割を務める科学館ならではの立場にあり、科学技術分野の人々と、ビジネス、教育、政府、研究開発、宗教、芸術分野といった人々を結びつけています。科学者たちは今、一般の人々が科学技術と関わり、携わることの重要性を認識しています。科学館がハブとなれば、そのような多様性と協力によって、グローバルな持続可能性を解決するための新鮮なアプローチをもたらすことができるでしょう。

館長として考える未来館の役割について具体的に教えてください。

東日本大震災が発生した2011年3月11日の時点で、私たちのものの見方は変化しました。私たちは、自分たちの活動の本当の意味を考え直さざるを得なくなったのです。あの日、多くの人々が地震、津波という自然災害に遭いました。また、原子力発電所の爆発という人災の犠牲となった人々もたくさんいました。起こり得る多くの災害からできる限り人々を守るために、未来館として、改めて考え直し、より一層準備し、支援しなければならないことに気付きました。人類は自然に対して多大な影響を与えています。そのことを念頭に置きながら、SCWS2017では、他の科学館が準備することを支援できました。

最後に、特に強調されるべき点等がございましたら、お願いします。

世界の多くの人々は、以前より知識が豊富になっていると感じていますが、その一方で、知識が増えれば増えるほど、満足感が減っているようにも見えます。科学技術は物質的な意味では貢献し続けています。しかし、満足感は物質主義をはるかに超えたものであり、各個人の総合的な充足感を含める必要があります。ビッグデータ、AI、ロボティクスは、物質的な財産のみならず、知的な、そして感情的な満足感を探求する上でも、それぞれの役割を果たし、助けとなることでしょう。



1 ICSU は、1931 年に設立された非政府機関であり、アカデミーなど各国を代表する組織と、各学問分野を代表する国際学術連合で構成。https://www.icsu.org/about-us