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Highlighting JAPAN

古代日本の味わい

火山地帯の眺望、一風変わった温泉、地域の美味しい産品で知られる霧島錦江湾国立公園は、一年を通じて特別な旅の経験を提供している。

南九州の宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島錦江湾国立公園は、過去の大規模な噴火によって形成された巨大なカルデラが大きな特徴である。新燃岳や桜島のある南九州では現在も活発な火山活動が続いている。公園は、大小20以上の火山が連なる北部の霧島地域と桜島を中心とする南部の錦江湾(鹿児島湾)地域で構成されている。霧島地域は、えびの高原、霧島温泉郷、高千穂河原、霧島神宮などが有名である。錦江湾地域は、大隅半島と薩摩半島に囲まれた錦江湾、大隅半島の佐多岬、薩摩半島の開聞岳や指宿温泉、その中心で噴煙を上げる桜島が織りなす景観が美しい。

国立公園のシンボルになっている桜島は、標高1,117m、面積約80km²、周囲約52kmで、約26,000年前に誕生したと言われる。桜島は北岳と南岳の2つの主峰から成る複合火山で、地球の鼓動を感じられる場所として国内外からの観光客が絶えない。

有史以来大きな噴火を繰り返してきた桜島は、その名の通り、元々錦江湾に浮かぶ島だったが、1914年の大噴火で大量に流れ出した溶岩によって錦江湾東側の大隅半島と陸続きになった。この時の噴火の威力は凄まじく、一晩で桜島東部の黒神町一帯を火山灰や軽石で埋め尽くした。黒神町にある腹五社神社の高さ3mの鳥居も上部の笠木部分の約1mを残して火山灰に埋没した。この鳥居は、火山噴火の脅威を後世に伝えるため、「黒神埋没鳥居」として保存され鹿児島県の天然記念物に指定されている。

桜島の東側、標高550mの高峠は、桜島と錦江湾のパノラマを楽しむことができる大隅半島の名所の一つである。半島の突端、九州本土最南端に位置する佐多岬は亜熱帯植物が生い茂る遊歩道が整備され、晴れた日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)のロケット打ち上げ施設がある種子島や、世界遺産に登録された縄文杉で有名な屋久島が見える。

大隅半島の対岸、薩摩半島には九州最大のカルデラ湖、池田湖がある。この湖には、体長1.8m、胸回り60㎝、体重20㎏もの大うなぎが数多く生息する。湖畔には菜の花などの美しい花が咲き乱れ、菜の花が満開になる1月には「いぶすき菜の花マラソン」が開催されるなど、ジョギングやサイクリングのスポットとして人気を集める。

薩摩半島を南に下った先に、鉄道ファンの聖地の一つ、九州最南端の鉄道駅「西大山駅」がある。現在は無人駅だが、地元の指宿市観光協会が発行する「JR日本最南端の駅到達証明」を求め、全国から鉄道ファンがやってくる。駅には菜の花をイメージした「幸せを届ける黄色いポスト」があり、大切な人に手紙を投函する旅行者も多い。駅の周辺は、12月末から2月にかけて、菜の花が見ごろを迎える。菜の花畑越しに眺める開聞岳は美しく、撮影スポットとしても人気を誇る。

開聞岳は薩摩半島の最南端に位置する標高924mの火山で、半島の南端の付け根から海にせり出すようにそそり立つ円錐形の姿は秀麗な美しさを誇り、別名「薩摩富士」とも呼ばれる。北は霧島地域から南は屋久島まで一帯の名所を頂上から一望できる。麓には遊歩道があり、サイクリングで山を一周することもできる。開聞岳の東側、指宿温泉は、世界でも珍しい天然の砂むし温泉が楽しめることで、古くから多くの湯治客に親しまれている。

砂蒸し風呂とは、砂浜に寝そべり熱い砂をかけるもので、10分ほどで大粒の汗があふれ出す。老廃物の排出を促し、美肌効果やアトピーの改善、関節炎や腰痛にも効果があると言われる。

火山が生み出したものは、美しい景観や温泉だけではない。桜島から長い年月をかけて降り注いだ火山灰が南九州にシラス台地を形成した。シラス台地は水はけが良く、桜島小みかん、桜島大根や薩摩芋など鹿児島の名産を産出している。薩摩芋を原料とする蒸留酒、薩摩焼酎は世界貿易機関(WTO)に地理的表示が認められた産地指定銘柄の1つで人気が高い。砂蒸し風呂に入って、錦江湾を眺めながらグラスを傾けるのも、公園の旅の醍醐味の一つである。