Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan March 2018 > 防災技術

Highlighting JAPAN

プレハブで被害を即時に救済

ある日本の会社は、仮設住宅を迅速に建設する経験を海外の被災した地域社会に広げるとともに、プレハブ部材を供給している。

地震や洪水などの自然災害が住民の家を奪い去ってしまうことがある。家が損壊し自立再建が困難な場合には、災害救助法に基づき都道府県が応急仮設住宅を供給する。1995年の阪神・淡路大震災では約50,000戸、2011年の東日本大震災では約53,000戸、2016年の熊本地震では約4,300戸の仮設住宅が建設された。

大阪府大阪市に本社を置く大和リース株式会社は、こうした大規模な仮設住宅の供給に当たり中心的な役割を担っている。同社は、事務所、工場、店舗、公共施設向けのプレハブを主体とした建築、仮設建物リースやPFI事業、商業施設の開発・運営など幅広い事業を展開している。

災害時の仮設住宅は、短期間で完成させなければならないため、鉄骨や外壁などの部材を工場で生産し、建設現場で組み立てる仮設建築用のプレハブ建築が基本になる。大和リースは災害発生時に即応できるように、通常仮設建築として使用している部材を転用し仮設住宅を建設している。使用期間が一定で短期の建築現場事務所、イベント施設、仮設校舎などのプレハブを数多くリースし、終了後には解体して部材を補修・保管し、次のリースに再利用し循環させている。

「プレハブ建築用の部材を保管し再利用するシステムが、短工期での仮設住宅建設を可能にしています。大規模災害時に一刻も早く建設するために、常時400戸分の部材をストックするとともに、建設マニュアルを作成し、毎年机上訓練を実施しています。仮設住宅の建設は当社の社会的責任と考えています」と規格建築事業部長の北哲弥さんは語る。

同社の仮設住宅は海外でも再利用されている。例えば、阪神・淡路大震災の仮設住宅の部材は、1997年に兵庫県を通じてペルーに寄贈されて小学校校舎に生まれ変わった。1999年には台湾地震の被災者用住宅、2000年には東ティモール民主共和国とコソボ共和国で国連平和維持軍用の宿舎として活用されている。

大和リースは2015年から毎年、国際協力機構(JICA)が日本で実施している研修コース「住宅・住環境の改善と防災」で、アジアやアフリカなど開発途上国、22カ国から研修員を受け入れている。研修では日本のプレハブ建築、部材の保管、再利用などの講義、部材の生産・加工・組立を行う工場や部材の修繕・保管を行う施設の視察を行っている。

「プレハブ建築を大量に短期間で効率的に建設できるのが日本の強みです。リースから部材再利用のシステムが確立しているのは日本以外にはないと思います」と北さんは言う。

大和リースは2013年に世界的な建築家である坂茂氏と共同で、平時には途上国で低所得者向け住宅としてプレハブ建築用資材を製造し、災害時には日本を含め被災地に仮設住宅として供給するシステムを開発した。日本でも、大規模災害発生時に緊急に仮設住宅を供給するには限界がある。このシステムは、そうした問題に対応すると同時に、途上国の住宅問題改善や雇用創出にも貢献する。

建物の主要部材には大規模な生産設備が不要な、FRP(繊維強化プラスチック) で発泡ウレタン断熱材を挟んだ「FRPサンドイッチパネル」を採用している。非常に軽量で組み立てにも特別な技術は必要なく、一戸当たり、4人の人員で6時間あれば建築できる。

2015年、同社はフィリピンの現地企業と共同で試作品を製作し、現在、アジアにおけるシステムの実用化を目指し研究開発を進めている。

「各国が仮設住宅の規格を統一して部材の生産拠点を設ければ、供給不足に陥っても、他国で生産し、被災国に仮設住宅を供給できる相互協力が可能です」と北さんは言う。

被災者の生活の安定や被災地域復興を支えるため、大和リースは坂氏とともに、プレハブ建築用部材供給の多様化や現地資源の活用など、一層の改善を進めることとしている。