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Highlighting JAPAN

福島の魅力を伝える

イギリス人のゾーイ・ヴィンセントさんは、福島県の復興の様子を記録すると同時に福島の名所を訪れて海外読者向けで英語のブログに綴っている。

2011年3月11日の東日本大震災で被害を受けた福島県は、7年の時を経て、豊かな自然とともに復興に向けて前進している。福島県福島市在住のイギリス人、ゾーイ・ヴィンセントさんは、公益財団法人福島県観光物産交流協会で海外との交流の窓口として働きながら、彼女のブログ“Rediscover Fukushima”を通じて福島の情報を世界に向けて英語で伝えている。

「東日本大震災の復興への関心が高く、特に福島の復興に興味があり、エディンバラ大学では卒業論文のテーマに東北地方における震災からの復興を選びました」と彼女は語る。

ヴィンセントさんが日本に興味を持ったきっかけの一つは、中学生の頃に聴いた日本の曲だった。歌詞の意味は分からなくても日本語の音の響きが好きだったと言う。また、その頃、祖父の遺品整理の際に偶然多数の着物やこけしを見つけて祖父がかつて日本で仕事をしていたことを知り、日本との不思議な縁を感じた。彼女はエディンバラ大学に進学し、日本語を学ぶことを決めた。

エディンバラ大学は、3年次に外国語を専攻する学部は海外へ留学する制度を設けている。彼女は2013年9月からの東京の早稲田大学留学の機会を得た。

「日本は自然災害の恐れがある国ですが、過度に自然災害を恐れて挑戦の機会を失う人生は楽しくないと思いました。留学先の早稲田大学で過ごした1年間は素晴らしいものでした」と振り返る。

特に、東北地方の山形県最上町でのホームステイは、留学中最も印象に残る経験となった。ヴィンセントさんは、とりわけ町の人々がすぐに受け入れ歓迎してくれたことに感動し、大学卒業後に日本の地方自治体が実施する『語学指導等を行う外国青年招致事業』(JETプログラム)に応募し再び訪日を果たした。彼女は地方の小さな町を希望し、九州地方の長崎県雲仙市で、1年間、小学校と中学校で外国語指導助手を務めた。

この期間、ヴィンセントさんは日本を愛する気持ちが大きくなった。これを受け、彼女は、JETプログラム終了後も日本で働き続けることを決意し、JETプログラム参加者を対象に開催される『JETプログラムキャリアフェア』で、公益財団法人福島県観光物産交流協会の求人を見つけた。数多くの応募者の中から採用され、2016年、念願の福島で仕事に就くこととなった。

ヴィンセントさんは同協会で、福島県の観光促進活動や海外の旅行会社との商談、さらには通訳など多岐にわたる仕事を担当している。インターネットでの福島に関する最新情報発信も彼女の主要な仕事である。ブログでは復興の様子をリポートすることもあり、彼女はより良いインターネット上での情報発信方法を常に模索している。インターネット上では、2011年3月の原子力発電所事故や福島県に関する不正確で誤った情報が今も流れ続けているので、こうした彼女の仕事は重要である。

写真好きのヴィンセントさんが発信するインスタグラム“Rediscover Fukushima”には福島県内の美しい写真が並ぶ。どれも彼女が直接取材したものである。

「福島の中でも江戸時代の集落の町並みがそのまま残る大内宿は、福島の魅力を見つけられる場所の一つです。大内宿がある会津は武士の歴史の風格を直接感じられる地域です。また、大内宿の北、会津若松市を起点にして周辺の町を散策するとそれぞれ少しずつ風土が違って興味深いです。さらに年一回、福島の浜通りで行われる、武者姿の地元民が馬を駆って空に打ち上げられた神旗争奪を競う『相馬野馬追』もお勧めです。日本には素晴らしいお祭りが各地にありますが、相馬野馬追は実に際立っていると思います」とヴィンセントさんは語る。

ヴィンセントさんは、彼女の卒業論文のテーマでもあった災害後の復興の知識をさらに深め、2011年の震災で最も影響を受けた福島県の街の復興に焦点を当てた研究論文の出版を望んでいる。