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Highlighting JAPAN

復興公園でエコツーリズムを

青森県南部から宮城県の牡鹿半島の南北約220㎞に及ぶ三陸復興国立公園は、東日本大震災からの復興と被害の伝承を目的とする国立公園である。

三陸復興国立公園は、リアス式海岸など変化に富んだ海岸線が美しい公園であり、1995年、陸中海岸国立公園として指定され、2010年には約407万人が訪れていた。2011年の東日本大震災で被災した三陸地域の復興に貢献するため、2013年に三陸復興国立公園として指定された。

東北地方最大の都市仙台市から北東に車で1時間半ほど行くと、太平洋に面した南三陸町に神割崎という景勝地がある。神割崎という名前は、二つの村が起こしたいさかいに怒った神様が大きな岩を引き裂き割いて村を引き離してしまったという伝説に由来する。その荒々しい波が打ち寄せる神割崎の二つの岩の割れ目からは、毎年二回、2月中旬と10月下旬に、美しい朝日が昇る。

南三陸町を北上した岩手県陸前高田市には、白い砂浜に2㎞にわたって松林が伸びる高田松原があった。防潮林として約350年前に植林が始まり、約7万本の松が茂る景勝地で、震災前の2009年には109万人の観光客が訪れていた。津波は松林ごと高田松原を押し流したが、奇跡的に一本の松が残り住民の心の支えとなった。残念ながら、その最後の一本も枯死してしまったが、防腐処理や補強が施され復興を象徴するモニュメント「奇跡の一本松」として保存されている。現在、高田松原の再生に向け、2019年度までに4万本の松を植林する計画が進められている。

その北東側の岩手県大船渡市の末崎半島には、碁石状の円い小れきが広がる碁石海岸、海面から突き出した三角形の岩が連なる穴通磯など人気の観光スポットがある。特に、穴通磯は、海水の浸食によって開いた三つの大穴を観光船でくぐり抜けることができる。

大船渡市をさらに北上して宮古市に入ると、それまでの荒々しい海岸線の風景は一変し、透明度が高く波が穏やかな群青の海に、林立する鋭くとがった白い流紋岩がまぶしい浄土ヶ浜に出会う。18世紀、その秀麗な美しさに出会った高僧が、「さながら極楽浄土のごとし」と表現したところから、その名が付けられた。

三陸沿岸は豊かな漁場が多いことでも知られているが、浄土ヶ浜の南にはカキ養殖が盛んな山田湾がある。ここも津波で甚大な被害を受けたが、流失を免れた養殖いかだを組み直したり地元の間伐材で新たに組み上げたりするなど、漁業者の努力によって山田湾に養殖いかだが浮かぶ光景が戻ってきた。山田湾でとれたカキは身も厚く、湾岸に建つ「かき小屋」でとれたての殻付きカキを豪快に蒸し焼きにして味わうことができる。

三陸復興公園は、この他にも見どころが多く、美しい海岸と絶景を楽しみ、山海の幸、さらに海水浴から登山まで楽しむことができる。例えば、最北端の青森県八戸市の種差海岸は波打ち際までが広がる天然芝生が美しいし、70㎞ほど南下した岩手県田野畑村には、高さ約200mの断崖絶壁が8kmにわたって続く“海のアルプス”と呼ばれる北山崎があり、さらに10㎞南には規則的に鋸歯状が特色の手付かずの自然が残る鵜ノ巣断崖が見る者を圧倒する。

津波の被害、復興の伝承を目的として整備された公園には、観光客が戻るとともに全国から防災教育学習を目的に訪れる人々の数も増えている。

三陸復興国立公園では、八戸市から、最終的には福島県北部の景勝地である松川浦までつながる「みちのく潮風トレイル」が2019年3月までに全ルートの開通を目指し整備されつつある。これは震災の痕跡を結びながら地域の自然や暮らしを利用者が体験する自然遊歩道である。エコツーリズムを楽しみながら、三陸の豊かな自然を作り上げる、森、里、川、そして海のつながりの大切さを継承することを目的としている。

三陸地域は三陸復興国立公園に指定されたことによって、震災復興と被害の伝承のみならず、いっそう魅力あふれる公園として生まれ変わろうとしている。