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Highlighting JAPAN

学校給食で地産地消

地域で生産された農林水産物を、その地域で消費する「地産地消」。静岡県三島市では、「学校給食での地産地消」を2002年から始めている。

「きっかけは娘の通学する小学校の児童たちをジャガイモ堀り体験へ招待したことでした」と話すのは、三島市の学校給食へ地場の農産物を供給する生産者団体・三島市学校給食農業生産者研究会の顧問・杉本正博さんである。児童にお土産として持たせた小松菜の美味しさに学校給食を担当する栄養士が着目し、杉本さんが学校給食への素材提供の打診を受けた。

同研究会の林 正俊会長は「生産者間の調整により価格を通年統一し、野菜のサイズ、質などをチェックする目揃え会、栄養士の産地見学などを開催し、信頼関係を築くことで市立小学校14校と3か所の中学校共同調理場へ採れたて野菜を直接配送する仕組みが作られました」と説明する。

2009年、三島市は「食育推進都市宣言」を行い「学校給食での地産地消」を促進している。2017年度時点で三島市の学校給食において地場産物が占める割合は、年間約200日近くの給食提供日を通じて約42%。文部科学省の調査によると学校給食における地場産物使用率は全国平均で 25.8%(2016年度)である。

献立の基本は「和食」で、生活習慣病の予防、日本の伝統的な食生活、地域の食文化を学ぶことを目的としている。

「市内全小中校の同一学年には、計約1,000人の児童生徒がいます。16年続けてきているだけに非常に多くの子供たちが地場産物の学校給食で育ったことになります。この間、保護者も含めて、地産地消、和食の大切さに対する市民の皆様の意識は着実に高まってきたと考えています」と三島市教育委員会学校教育課の長谷川昭課長は話す。杉本さんも「定期的に小学校で児童と一緒に給食を食べ、話をする機会があるのですが、児童の農業に対する興味が増してきたことを実感しています。例えば、野菜の旬や栽培の方法、難しさについて質問されたり、スーパーの野菜売り場で種類や値段をしっかり見るようになったと報告されたり。また、親戚の家で時々農業を手伝うようになった、という子供もいました」と言う。

地産地消の学校給食は生産者にも良い影響をもたらしている。林会長は「地域への貢献もさることながら、やはり児童から直接『おいしかった』と言われることが何よりの励みになります。また、子供たちの食習慣に和食が定着していけば、農業の未来にも好影響を与えると思います。承継の問題は楽観できませんが、三島の農業に興味を持つ若い世代も現れ始めています」と話す。

「地産地消の学校給食をこれからも変わらず続けていくためには、何より安定的な野菜の生産体制を維持していくことが大切です」と杉本さんは言う。市の担当者や栄養士と共に、常に安全でおいしい野菜を生産するためにどうすべきか考えながら日々畑に向き合っている。