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男性の平均寿命が全国1位! 滋賀県の長寿の秘けつ

県民の健康づくりにいち早く取り組み、都道府県別の平均寿命が男性1位となった滋賀県。20年前には中位だった平均寿命を上位に押し上げた県民の食事や生活、県の取組など、滋賀県ならではの長寿の秘けつを紹介する。

男性の平均寿命が81.09年、女性が87.26年と、世界でも有数の長寿国である日本。最も新しい都道府県別の平均寿命では、滋賀県の男性が81.78歳となり、初の全国1位に躍り出た。女性も87.57歳で全国4位と近年、男女共に平均寿命が伸びており、健康で自立した生活ができる健康寿命も、男性が80.39歳で全国2位、女性が84.44歳で全国3位となっている。

20年以上前から県を挙げて健康づくりに取り組む滋賀県の健康寿命推進課主席参事であり、滋賀県衛生科学センターの所長も務める井下英二さんは、この結果について次のように語る。「県民の健康や食生活などの状況を調査した結果、滋賀県には、たばこを吸わない、多量飲酒をしない、意識的に運動をするなど、健康な生活習慣を身に付けている人が多く、平均寿命・健康寿命と生活習慣との関係の深さが分かりました。失業者や高齢単身者の少なさも近年の国勢調査で明らかになっており、そうした生活環境の良さも健康な生活習慣の維持につながっていると思います。また、健康への影響が大きいと言われるたばこについては、県でも喫煙率を減らす取組を以前から積極的に進めており、県内すべての小・中・高校で禁煙防煙教育を行っています。その結果、10年前と比べて、20代や30代など若い世代の喫煙率が顕著に減少し、肺がんや慢性閉塞性肺疾患などによる死亡率も徐々に下がってきています」。

滋賀県は他府県と比べ、地域の健康づくりを推進するボランティア団体・健康推進員の活動も盛んである。市や町が主体となって健康推進員を養成し、その健康推進員を通じて、バランスの取れた食事の啓発や調理実習、特定健診やがん健診の受診勧奨、ロコモティブシンドローム(寝たきりを引き起こす運動器の病気)予防の体操など、様々な活動を展開している。また、琵琶湖を中心とする自然豊かなロケーションや、夏も冬も比較的穏やかで安定した気候に恵まれていることから、ウォーキングやジョギングなど、自発的にスポーツをする人も多いという。

他にも、健康寿命を伸ばすだけでなく、健康なシニアたちが生き生きと暮らせる活力のある長寿社会を作るため、「滋賀県レイカディア大学」を開設した。大学では60歳以上のシニアたちが園芸や地域文化、健康づくりなどを学び、卒業後はその多くがまちづくりの企画運営や観光ボランティアガイドなど、地域貢献に活かしている。「一般的に、滋賀の人は何か目標を決めると一丸となって頑張る気質がある。健康に関するイベントに参加したり、ボランティア活動をする人も多く、謹厳実直な県民性が良い影響をもたらしているように思います」と井下所長も指摘する。健康寿命推進課では、健康づくりに対する県民の意識をさらに高め、健康寿命の延伸を目指す「健康寿命延伸プロジェクト」を2014年から毎年実施している。県内で健康づくりの取組を積極的に行っている地域団体や企業の優れた事例を発掘・表彰すると共に、その情報を広く県民に発信している。

平均寿命・健康寿命の伸長という結果を伴った多角的な取組が評価され、今では他府県からの視察も増えている滋賀県。今後は、県内の事業所や大学などとも手を携え、シニアや子どもだけでなく、働く世代の健康づくりやそのための環境づくり・仕組みづくりにも取り組むと言う。「今回の結果に満足することなく、健康長寿の要因や秘けつ、それを維持する方法をさらに細かく調査・分析し、全国に広めていけたらと思っています」と井下所長は展望を語った。