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Highlighting JAPAN

 

伝統ある明治記念館で働くフランス人女性

明治記念館でセールスマネージャーを務めるフランス人女性、サマンタ・ラソーさん。明治時代に迎賓館として建設された歴史ある明治記念館で働く思いと、現在の活躍について伺う。

日本在住歴5年のサマンタ・ラソーさんは、フランスのマルセイユ大学から明治大学への交換留学を経て、現在は明治記念館法人営業部にて国際セールスマネージャーとして勤務する傍ら、フランス語、英語の両方を用いて、日本の観光情報を発信したり、ビジネスセミナーでの講演を行うなど、幅広く活躍している。「日本に興味があり、大学時代に初めて日本語を勉強して、交換留学生に選ばれました。今では日本人の同僚に囲まれ、外国人顧客に対して時折英語を使う以外は、一日中日本語を話しています。母国語のフランス語はだんだん自然に使えなくなってきました」とラソーさんは笑う。

一度フランスへ帰国し、大学院へ進学してフランス企業で短期間の勤務を経験したが、日本で働きたいとの思いが募り、ワーキングホリデーを利用して再び日本へ。日本文化を学ぶうちに神道や寺社へ興味が湧き、「明治神宮の結婚式場である明治記念館に行きたい」と持ち前のチャレンジ精神と粘り強さを発揮して、日本人と同じ枠で就職活動をし、見事採用された。2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催を控え、外国人観光客が急増する中、明治神宮や明治記念館にとってラソーさんは貴重な人材である。

1881年に諸外国の賓客をもてなす迎賓館として建てられた明治記念館本館は、その後大日本帝国憲法草案審議の御前会議の会場となるなど、歴史的価値のある重要な場所であり、1947年に総合結婚式場として一般公開されてからも、伝統に基づいた礼節と気品あふれるサービスの評価が高い。日本の歴史と伝統のある勤務環境で、フランス人であるラソーさんは自らの価値観や仕事の仕方と日本的な価値観や作法とのバランスを見つけるべく、努力を重ねてきた。勤務は3年目を迎え、外国企業などの渉外と宴会の企画運営を担当し、周囲の理解にも恵まれて、日本在住外国人としての独自性、興味関心や創造性をフル活用した仕事ができており「望んだキャリアが実現した」ととても満足している。

日本では、例えば宴会一つを運営するのにも多くの人間が意思決定に関わり、コントロールが効いているがゆえに完璧な結果を出せるのだと実感している。また、自分が所属する企業や団体を代表して、自分の直接的なミスでなくとも責任を取って頭を下げる文化にも、フランス人として始めは驚いたが、今では日本らしい組織の作法なのだと理解できるようになった。職場の女性割合や年齢にこだわらない起用など、フランスと日本ではまだ違いがある。しかし仕事柄、寺社について勉強する中で、仏教と神道が共存する日本の文化観には世界にも稀な柔軟さや適応力の高さがあると感じており、柔軟な日本なら必ず変わっていくはずだと言う。

2020年のオリンピック・パラリンピック開催に向けて、「今後は明治神宮の外国人参拝客のアテンドや国際研究センター、スタジアムや美術館での仕事などにも協力ができれば」と願う。体力作りと文化理解を兼ねて、合気道を始めたいと最近は考えている。日本在住の外国人として日本の情報を広く発信していきたいと意気込む、ラソーさんの日本への興味と愛は尽きない。