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Highlighting JAPAN

 

 

NPOは暮らしやすい市民成熟社会の指標でもある

1998年に特定非営利活動促進法が成立した日本では4万団体を超えるNPOが活動中である。NPOやボランティアなどの社会環境整備のために活躍するさわやか福祉財団 会長、堀田力さんに日本のNPOの取組について伺う。

2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨などでも、ボランティアを中心とした社会貢献に注目が集まりました。日本におけるNPO・NGOの現状とは、どのようなものでしょうか。

戦後日本の公益分野では政府の存在が大きく、自覚した市民がテーマを持って社会活動を展開するNPOやNGOのような存在はあまり一般的ではありませんでした。ところが1995年の阪神淡路大震災で市民の自主的な活動が広がり、それに刺激を受ける形で1998年に特定非営利活動促進法が成立したのを契機に、一挙にNPOが多数設立されました。2011年の法改正による要件の緩和を経てさらに数が伸び、これまでおよそ5万団体のNPOが設立されています。現在、増加数は落ち着いたものの、活動内容の充実が進んでいる状況です。

日本でのNPO・NGOの役割や意義とは何でしょうか。

もともと日本社会は個人間やご近所の助け合いなど、コミュニティの関係性が豊かだったのです。ですが政府や個々人の頑張りだけではカバーできない領域というものがある。NPOが広がる以前には明治時代から公益法人というものが存在しましたが、これは官の認可取得が必要で法人化が困難でした。1995年の阪神淡路大震災を機に、市民による自由で自主的な組織活動が国民に広く認識され、災害支援のみならず福祉や育児など、市民の間で静かに存在していた色々な活動が表出し、幅広い分野でNPOは着実に広がりました。

NPOが発展した期間とは、日本経済の「失われた20年」でもありました。戦後1980年代まで、日本は経済が右肩上がりの安定成長を続け、国民は物質的な豊かさを求める傾向にありましたが、それらが充足し、1990年代より日本は心の交わりや困った人を助ける優しさ、美しい環境や芸術など、精神的な喜びへと関心を向けるようになったのです。それはようやく日本人が達した、大きな転換点だったと思います。社会が成熟し、かつての日本社会が持っていた心がよみがえったとも言えるかもしれません。

福祉分野ではどのような取組が行われていますか。

実はNPO数の半分を占めているのが福祉分野です。特に介護分野は、高齢化と核家族化の結果として政府や医療の対応限界を超えてこぼれた部分が大きく、2000年に介護保険制度ができるまで多くのNPOが設立されました。初めは生活を支える即物的なサービスが主流でしたが、介護保険が高齢者の生活の相当部分を保障するようになった後は、一人暮らしの高齢者の心の部分を支える話し相手や仲間作りなど活動の重点が変わり、内容にも広がりがでてきました。

日本のNPO・NGOの可能性、そして今後の展望を教えてください。

欧米に比べ、日本のNPOはまだ数も寄付金額も少ない。日本はこれまで社会保障が手厚いこともあり、これから自助努力への意識が大きく育つ段階にあります。ですが助け合いや絆を希求する動きがあり、今後政府の社会保障も縮小すると予想される中、ここ10年でNPO活動は一挙に欧米に追いつくかもしれません。そのような状況を国民が自覚し、自分たちで良い成熟社会を作るよう、NPO支援が広がることが望まれます。