Home > Highlighting JAPAN > Highlighting Japan February 2019 > 世界に広がる日本の文学

Highlighting JAPAN

 

世界に羽ばたいたドラえもん

日本の漫画作品『ドラえもん』は、誕生以来約50年に渡り広い世代に愛され、国境や言語を超えて多くの読者に読まれてきた。

勉強も運動も友達関係も、何をやってもうまくいかずママに叱られる少年、野比のび太。ある日、彼の勉強机の引き出しの中から、タイムマシンでやって来た22世紀のネコ型ロボット「ドラえもん」が飛び出した——。

日本の児童向けSF漫画作品である『ドラえもん』は、ドラえもんの「4次元ポケット」から繰り出される独創的な「ひみつ道具」に助けられ、少年たちが日常の大小のチャレンジを乗り越えていく、藤子・F・不二雄氏の代表作である。漫画連載が開始された1970年以来、テレビアニメ化、映画化などが行われ、これまでに12言語17カ国で漫画が出版、55カ国でアニメが放映されるなど、約50年にわたって国内外の多くのファンに愛されてきた。

海外で翻訳出版された漫画本に対しては、アジアでの反響が大きい。「特にベトナムでのドラえもんの受け入れられ方は、他国とは一線を画しています」と、小学館 国際メディア事業局 国際事業センター室長 斎藤満さんは語る。日本の小学館と正規契約が結ばれる前、ベトナムでは海賊版ではあるが既に広く普及していた。正式契約によって得られた印税を藤子氏が「学びたくても学べない子どもたちの奨学金として使ってほしい」と辞退、「ベトナムの子供たちのためのドラえもん教育基金」が設立され、これまでに1万人以上の学びたいと願う児童を支援してきた。

今ではベトナム全土の交通安全キャラクターとなったドラえもんが学校に現れると児童たちが熱狂し、街の書店では漫画コーナーの3分の1を『ドラえもん』が占めるほどである。その人気と知名度の理由を、斎藤さんは「ドラえもんは子供向けの雑誌で始まった漫画で、小さい子供たちの友達のような存在。わかりやすい絵柄、子供たちの素直な夢や欲求をドラえもんがひみつ道具で叶えてあげるという楽しい構図や優しく勇気づけられる世界観は、時代や国を超えた普遍的なものなのです」と説明する。

オリジナルの漫画原稿を預かる出版社として、斎藤さんは「この漫画原作を、この姿と価値のまま、後世永劫残していくことが小学館全体の意思です」と話す。しかし、オリジナル単行本の印刷フィルムを大規模にリニューアルして画質の向上を図るなど、劣化防止の努力工夫などは怠らない。「漫画『ドラえもん』が時代を超えた素晴らしい作品であるというアピールは海外市場でもしっかり続けたいですね」。藤子氏の創作哲学を受け継いだ出版人たちの真摯な努力によって、漫画『ドラえもん』は、いつまでもオリジナルの姿のまま、子供たちの信頼される味方であり続けるだろう。