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Highlighting JAPAN

 

 

温泉大国・日本の名湯

北海道~沖縄と気候風土は異なってもこの点は全国共通――それは温泉が湧いていること。日本には計3000超の温泉地があり、多くの人を癒やしている。そんな温泉大国で特筆すべき名湯 3ヵ所を厳選した。

日本の温泉は1948年に制定された「温泉法」で定義づけられている。具体的には、地中から湧出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、温泉源から採取される時点の温度が摂氏25度以上、または、国が定める物質(規定量以上の遊離炭酸、ラドン、ラジウム塩などのうちいずれか一つ)を含むものを指す。

環境省の2016年の調べによると、日本には計3000超の温泉地があり、その規模は世界有数である。火山が多く火山性の温泉に恵まれている、多雨で地下水が豊富、元来日本人が入浴を好む民族であることなどが、温泉大国・日本を形成しているとされる。
ここでは、その地域の魅力が色濃く反映された特にユニークな3泉を紹介する。

●登別温泉…北海道南部の太平洋沿岸にあり、開湯から約160年を迎え、北海道にある温泉地245ヵ所(2016年度環境省調べ)の中でも最古の温泉地である。自然湧出量は1日約1万トンで源泉温度は45~90度と熱い。泉質は硫黄泉、重曹泉など計9種類あり、多様なお湯を楽しめる。
登別の大湯沼から流れ出す大湯沼川は希少な天然の足湯であり、川沿いに生い茂る原生林が趣きある景観を形成している。毎年6~7月の木・金曜の夜には、地獄谷に棲むという伝説の「湯鬼神(ゆきじん)」が、手筒花火を夜空に打ち上げて邪気を払う「地獄の谷の鬼花火」が行われ、多くの観光客を集めている。

●下呂温泉…岐阜県のほぼ中央にあり、およそ1000年の歴史を持つ。傷ついた白鷺が温泉の在りかを知らせたという伝説でも知られる。代表的な景勝地、飛騨川沿いに湧く噴泉池は一切の囲いがなく、開放感は抜群である。温泉街には無料で楽しめる足湯が点在している。
また、加盟旅館で3回まで利用できる日帰り入浴専用「湯めぐり手形」や、1~3月の毎週土曜、日本特有の四季の行事や風習を和の風情ある花火で表現する「花火物語」も人気である。アルカリ性単純温泉には天然の石けん効果があり、美容や健康づくりにも優れた効果があることから「美人の湯」の別名もある。

●有馬温泉…兵庫県神戸市の六甲山地にあり、神話に登場するほか、1400年以上前に当時の天皇が滞在した記録も残る。戦国時代には豊臣秀吉が大規模な改修工事を行った。
環境省が療養泉として指定する9つの主成分のうちの7つが含まれており、一ヵ所の温泉にこれだけ多くの成分が含まれているのは世界的にも珍しいと言う。泉質は3種類あり、含鉄ナトリウム塩化物強塩高温泉で、空気に触れて酸化すると赤さび色に変わることから赤湯とも呼ばれる「金泉」が有名である。京都の北野天満宮を分けて祭られた有馬天神社の境内にある泉源が知られており、地下185mからくみ上げられた100度近くの高温の金泉が常に勢いよく湯煙を上げている。
また、さくら祭り、川座敷イベント、夏祭りなど季節ごとに開かれる多様な行事も人気である。

ひとくちに温泉と言っても、歴史や景色、規模、泉質などによって魅力は異なる。事前に調べて、好みの温泉地を訪ねるのも良いだろう。