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Highlighting JAPAN

 

 

家の風呂が瞬時にアップグレード!入浴剤の効能

温泉地はもちろん、自宅でも湯船に浸かり、入浴を楽しむ日本人にとって入浴剤は身近な存在である。日本で初めて入浴剤を製品化した株式会社バスクリンの“お風呂博士”こと広報担当の石川泰弘さんに歴史や特徴を聞いた。

日本初の入浴剤「浴剤中将湯(ちゅうじょうとう)」が発売されたのは1897年のことだった。ただし、これは偶然の産物だったと石川さんは話す。「当社の当時の主力商品は『中将湯』という16種類の生薬を配合した婦人漢方薬で、身体を温める効果がある煎じ薬でした。そこである社員が「それならば行水の時、桶に残りかすを入れてお湯を使えば身体が温まるのでは」と試したところ、身体の保温効果や湿疹の改善を確認したのです。その報告を受けた創業者の津村重舎(じゅうしゃ)が改良し、入浴剤として製品化しました。当時は一般家庭に内風呂はなく、銭湯が主な顧客だったということです」

1930年には、温泉成分と芳香を加えた夏用入浴剤「バスクリン」を発売し、更に市場が拡大する。戦後の高度経済成長期には一般家庭に内風呂が増加し「遠くの温泉より我が家で温泉気分」というキャッチフレーズのCM効果も手伝って爆発的にヒットした。
その後、競合他社が本格的に参入し、入浴剤は進化、多様化の道をたどる。炭酸ガス系、薬用植物系、清涼系、スキンケア系などの選択肢がそろい、消費者は好みやニーズに応じて自宅での入浴を楽しめるようになった。中でも日本の入浴剤の歴史に大きな足跡を残しているのが「温泉系入浴剤」である。「1986年に販売したのが『日本の名湯シリーズ』で、これは国内の数ある温泉の源泉の中から、風呂釜を傷める恐れがある硫黄や塩分が強いもの、酸性のもの、強アルカリ性のものなどを除外し、残った源泉から知名度があって再現できるものを厳選しました。特に北海道の『登別カルルス』は、それまでに実現できなかった湯の白濁技術を当社が日本で初めて開発し商品化したことで大ヒットしたのです」と石川さんは説明する。バスクリンを販売し始めた当初のキャッチフレーズが、一層現実のものになったのである。

もっとも、昨今では日本人が湯船に浸かる時間は減少傾向にある。大手化学メーカー・花王の調査によると、2005年に1日当たりの湯船入浴時間が11.5分だったの対し、2017年には9.7分とおよそ16%短くなった。また、若い世代を中心に、浴槽に入るのが面倒であるという理由からシャワーで済ませる傾向も見られる。これに対して石川さんは「シャワーは身体を清浄にする効果はありますが、体温を上げて体内の免疫力を高め、病気予防、心身の健康維持、さらに安眠効果までは望みにくいと言えます。また、定められた水分補給や湯温設定、入浴時間などを守ることで免疫細胞を活性化させたり、乳酸の発生を遅らせるタンパク質・ヒートショックプロテイン(HSP)を増やす効果もあるため、一流アスリートも入浴効果に注目しています。最近シャワーばかりという方は、まず自分が気持ち良いと思える湯温の浴槽に約10分浸かってみてください。その際、入浴剤を使っていただければ入浴がより楽しく、効果も向上するのではないでしょうか」とアドバイスしてくれた。