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Highlighting JAPAN

 

 

フランス人銭湯ジャーナリストに聞く、外国人向けの入浴作法

江戸初期から一般に広まり、日本人に愛されてきた銭湯は、温泉人気も手伝い外国人からも注目されている。日本で銭湯の魅力を発信するフランス出身のステファニー・コロインさんに外国人向けの入浴作法を聞いた。

コロインさんが銭湯の魅力を知ったのは、交換留学生として立教大学に在学していた2008年である。「銭湯に関する論文を書いていた友人に誘われました。フランスでは他人と同時に入浴する慣習はなく、当時は日本語もあまりうまく話せなかったため緊張したのですが、常連のお客さんやご主人は私に優しく語りかけてくれました。以来、銭湯はお湯も人も温かいリラクゼーションの場であると分かり、好んで通うようになりました」と話す。
2012年に再来日し、再び銭湯に通い始めたコロインさんは、やがて日本各地の銭湯を巡ってHPやインスタグラムで情報を発信するようになる。遂には「銭湯ジャーナリスト」として独立し、英語のウェブサイトやインスタグラムで外国人向けに銭湯の魅力を伝えるほか、著作やメディア出演、講演会、外国人留学生向けの銭湯ツアー企画など活動の枠を拡大中である。そんなコロインさんに、外国人向けの銭湯入浴作法を聞いた。

「まず靴を脱いで、受付でお金を払い、脱衣所に入ります。次に服を脱いで浴場へ入るのですが、ここで重要なのが小さなタオルを持っていくことと、浴場に入った後『こんにちは』などと挨拶をすること。これでその場にいる人との距離感がぐっと縮まります」
そして、椅子、風呂桶を取って自分の場所を確保する。ここですぐ浴槽に入らず、最初に身体を洗ってとコロインさんは続ける。「浴槽には皆が入るため、その前に身体を清潔にするのが日本式。浴槽に入っている間、タオルをお湯に浸さないのもマナーです。最後、浴場から出る時は脱衣所に移る前に床を水浸しにしないようタオルで身体を拭いてください。全てに共通するのは『他の人に迷惑をかけないようにする意識』です。銭湯は時間、空間をシェアするコミュニティなので、皆が気分良く過ごせるように配慮する必要があります。なお、外国人に多いタトゥーですが、銭湯であればファッションタトゥーならほとんど問題ありません」

こうした作法を守って銭湯を楽しんでほしいとコロインさんは言う。「地方の有名な温泉も良いのですが、銭湯も温泉に劣らない魅力的な場所です。その地域の人々との距離感が近く、インターネットに載っていないローカルな観光スポットやグルメ情報を教えてもらえることもありますし、富士山やお城、その地域縁の伝統舞踊などを題材にした浴場の大きな壁を飾るペンキ絵はアーティスティックです。さらに寺社仏閣など日本の伝統的建築様式を踏襲した銭湯外観の『宮造り』も一見の価値があります。仮にどこかの銭湯に行き、雰囲気が自分に合わないと感じてもそこで終わらず、是非違う銭湯に行ってみてください。各々の個性はかなり異なるので、きっと肌に合う場所があるはずです」

これほど多様な魅力があるにもかかわらず、料金はリーズナブル(例:東京都は460円 (2018年末時点))で銭湯はコストパフォーマンスも優れているとコロインさんは強調する。手軽な日本文化の体験場所として、是非銭湯を日本観光の目的地に加えて欲しい。