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Highlighting JAPAN

 

地方創生が切り拓く日本の未来


日本は現在、国を挙げて地方創生に取り組んでいる。まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補を務める、伊藤明子さんに地方創生の目的、これまでの成果と課題、そして今後を伺った。

日本政府は地方創生を重要政策の一つとしています。なぜ日本は地方創生が必要なのでしょうか。

2014年に民間シンクタンク「日本創成会議」が公表した試算は、世間に衝撃を与えました。東京一極集中の流れが止まらずに推移した場合、2040年には、全国市町村のうち約半数で、20代、30代の女性人口が5割以上減少し、その多くが将来消滅するおそれがあるというものでした。日本では2008年をピークに人口減少が始まっていますが、特に地方では少子高齢化が進んでおり、人口が急速に減少しています。東京都とその周辺地域で進む過密化と地方の過疎化は、日本の社会、経済に深刻な影響をもたらします。人口減少に歯止めをかけ、東京圏への過度な人口集中を是正するために必要なのが地方創生なのです。地方創生で地方を活性化することが、日本全体の活力の維持につながります。

政府はどのような目標を定めているのでしょうか。

政府は、2014年、「まち・ひと・しごと創生法」に基づき、「まち・ひと・しごと創生本部」を設置しました。2060年を展望した「長期ビジョン」として、出生率がある程度まで上昇すると2060年に1億人程度の人口 (現在の人口は約1.2億人)確保されると見込み、2015年度から5年間の政策目標と施策を定めた「総合戦略」は、「地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする」、「地方への新しいひとの流れをつくる」、「若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる」、「時代に合った地域をつくり、安全なくらしを守るとともに、地域と地域を連携する」という4つの基本目標を掲げています。

今年度は第1期「総合戦略」の最終年度ですが、地方ではどのような変化が起きているでしょうか。

人口減少への危機感に、地方公共団体、様々な企業やNPOが地域作りを行う取組が増えています。例えば、岡山県西粟倉村では、豊富な森林資源を活用したベンチャー企業の育成が行われ、雇用創出、移住者増加につながっています。また、石川県輪島市では、中心地区の空き家を高齢者向けの施設、子育て支援施設、障害者支援施設などの施設として改築することで、地域の中で高齢者から子どもまで交流ができる活気ある町づくりが進められています。地方創生の成功事例を見ると、住民が気付いていなかった地域の魅力を地域外の人が発見し、それを活かした活動が行われているケースが少なくありません。

その一方で、東京圏への人口流入に歯止めがかかっていないことが深刻な課題となっています。特に、地方の中核都市から首都圏への人口流出が大きいのです。地方経済は良い状況であるにもかかわらず、希望する仕事がないなどの理由で、東京圏へと移住する若い世代が多いのです。

今年末には第2期「総合戦略」が策定される予定ですが、今後の地方創生のポイントを教えてください。

日本にはまだ、成長の「伸びしろ」が十分にあると思います。成長に必要なことの一つは多様性です。東京、離島、中山間地域など日本の地域は様々です。様々なバックグラウンド、価値観を持った人々が、その能力を活かせる社会にしていくことが重要です。東京とその周辺地域で生まれた、地方をほとんど知らない子供たちが増えています。地方と都市部との人的交流、さらには地方移住を進めることで新たなイノベーションを起こすことが期待できます。若者から高齢者までが活躍し、皆が支え合うミクストコミュニティの形成も大切です。

また、日本は今、IoTやAIなどの科学技術を活用して経済発展と社会的課題の解決を両立する「Society5.0」の実現を目指しています。様々な課題がある地方にこそ、課題を解決し新たな産業を生みだす大きな可能性があります。そうした人材を地方で育成することも必要です。

少子化や高齢化は他のアジア諸国でも進んでいます。一足早くそうした課題に直面している日本の取組が参考になればと思っています。