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Highlighting JAPAN

 

活力ある共生社会に向けて


2018年12月に成立した改正出入国管理法(入管法)が2019年4月に施行され、外国人の受入れ、在留の制度が大きく変わった。この改正の背景や新たな制度について、新たに発足した出入国在留管理庁の長官、佐々木聖子さんに伺った。

まず、入管法が改正された背景を教えてください。

アベノミクスの推進により、成長から分配への経済の好循環が着実に回りつつある中、2018年の法案提出の時点でも有効求人倍率が1.6倍を超える高さとなっていました。その一方で、少子・高齢化により生産年齢(15〜64歳)人口は毎年減少し、全人口の6割を切るまでになり、人手不足が深刻な問題となっていました。この喫緊の課題に対応するために、人材確保を図るべき産業上の分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを可能な限り早急に構築する必要がありました。そのため、政府は入管法等改正法案を昨年の国会に提出し、成立する運びとなりました。

法改正により出入国在留管理庁が設置されたのは何故でしょうか。

訪日外国人旅行者数は増加を続け、2018年には約3,120万人と過去最高を記録し、在留外国人も2018年末時点で約273万人と過去最高となりました。こうした中、円滑な出入国審査と厳格な出入国管理を両立し、増加する外国人に対する在留管理を的確に行わなければなりません。また、新たな在留資格の創設に伴う在留外国人の増加に的確に対応しつつ、外国人の受入れ環境整備に関する企画及び立案並びに総合調整といった新規業務に取り組む必要もあります。こうしたことから、法務省の入国管理局が出入国在留管理庁に改組されました。

新たな外国人材の受入れ制度についてお教えください。

日本においては、入管法等に基づき、就労資格の外国人(高度専門職等)、留学生、技能実習生1、観光客等の短期滞在者等の受入れを行ってきましたが、深刻な人手不足の状況を踏まえ、新たな在留資格として「特定技能」が加わることになりました。 

「特定技能1号」は,特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格で、「特定技能2号」は,特定産業分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。

特定産業分野は、「介護」、「ビルクリーニング」などの14分野2で、「特定技能2号」は、「建設」と「造船・舶用工業」の2分野のみにおいて受入れが可能となっています。

そのうち「特定技能1号」のポイントは、在留期間が通算で上限5年までであること、技能水準は試験等で確認、日本語能力水準は生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認、家族の帯同は基本的に認められないことなどが挙げられます。ただし、技能水準と日本語能力水準については、技能実習2号3を良好に修了した外国人は試験等が免除されます。

新しい制度の下、外国人を受け入れるために、どのような取組が進められているでしょうか。

国民と外国人の双方が尊重し合える活力ある共生社会を実現するため外国人の受入れ環境を整備することが重要です。今後、2018年12月に取りまとめられた「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」に基づき、地方公共団体における一元的相談窓口(ワンストップセンター)の整備の支援等、各種施策を実施していきます。

また、外国人が就労先として、大都市に限らず地方についても関心を持っていただけるよう、地方で就労するメリットを周知するなどの取組を進めていきます。

今後の抱負をお聞かせください。

新たな在留資格「特定技能」の制度については、日本社会と就労する外国人の双方から歓迎されるものとなるよう適切に運用していきたいと考えています。また、外国人とのより良い共生社会の実現に向けて、出入国在留管理庁が強力な総合調整機能を発揮できるよう取り組んでいきます。そして、出入国在留管理庁がより内外の皆様に信頼される行政機関になるよう努力していきます。


(注)
1 開発途上国等への技能等の移転を図ることを目的とする技能実習制度の下、日本で技術や知識を習得するために在留する外国人。
2 「介護」、「ビルクリーニング」、「素形材産業」、「産業機械製造業」、「電気・電子情報関連産業」、「建設」、「造船・舶用工業」、「自動車整備」、「航空」、「宿泊」、「農業」、「漁業」、「飲食料品製造業」、「外食業」
3 技能実習制度の下、1年間、日本に在留した技能実習生に対して、その技能をさらに高めるための期間として、2〜3年目に与えられる在留資格のこと。