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Highlighting JAPAN

ありのままの日本を発信し続ける中国人インフルエンサー

世界のSNSユーザーが約35億人と言われる今日、ユーザーは日々様々なコンテンツに触れ、SNS上で様々な交流が生まれている。そうしたユーザーに大きな影響力を持つ「インフルエンサー」達が存在する。日本を拠点に「日本」を発信する林羊羊さんもその一人である。

中国出身の林羊羊(リン・ヤンヤン)さんは、利用者7.2億人を超える中国最大のSNS「新浪微博(Weibo)」を中心にインターネット上で「林萍在日本(リンピン ザイ リーベン)」というニックネームで、日本のインバウンドプロモーションを行うインフルエンサーとして活躍している。リンさんのWeiboでのアカウントフォロワー数は約480万人、ライブ配信は平均して200万回以上のアクセスがあり、日本を訪れる中国人観光客に大きな影響力を持っている。

現在、リンさんは中国など海外市場に関心のある日本企業と海外ユーザーとをつなぐ事業を展開する複数の企業と提携している。

その業務のかたわら、毎日、観光やグルメを中心に日本のニュースやSNSから自身で選んだ最新情報を、中国向けに発信している。中でも、リンさんが日本の観光地などを訪れたリポートは、最も人気の高いコンテンツになっている。

「自然も文化も美しい、私自身が感じている日本の良さを、中国の方に伝わるように発信しています。意見が偏らないことと客観的であることには気を付けていますが、マスメディアや本では得られない、一般の目線での情報提供を心掛けています」とリンさんは語る。

リンさんが「林萍在日本」としてWeiboのアカウントを開設したのは、東日本大震災から1年後の2012年のことである。中国のマスコミは地震による被害を報道するばかりで、復興に向けた日本人の様子や観光面などは報道しなくなった。そこでリンさんは、日本の報道情報だけでなく、首都圏の店舗でさえ品不足が頻発した事態の中、それでも日本の人々が秩序を守る様子などを自ら取材して発信した。この時のリンさんの記事には中国のユーザーから大きな反響があった。2012年にはアカウント名に「在日本」を付け、主に日本の情報を発信するようになった。2014年には一般社団法人東北観光推進機構に招かれ、東北各地を訪れて被災地の復興の様子を伝えている。地方自治体や企業と協働することもあり、東北観光推進機構には今もプロモーションだけでなく、新しい中国人旅行者対象の企画立案などにも参加している。

リンさんがユーザーから支持を集めるのは、発信する情報が最新、かつ有用性と信頼度が高いためである。2018年9月に発生した大阪の台風被害の際も、その一週間後には日常を取り戻した繁華街の模様を配信し、訪日を予定していたたくさんの中国人観光客を安心させた。

「特にありのままの姿を発信できるライブ配信は大切にしています。ユーザーから質問があれば、その場で現地の人に聞いてやりとりできるのもライブ配信ならでは、ですね」とリンさんは笑顔を見せる。

北関東の田舎町を散策するライブ配信をしていた時、現地の老人に撮影の許可を求めると気軽に応じてくれたばかりか、リンさんのカメラに向かって片言の中国語で語りかけてくれた。すると、このライブ配信を視聴していた中国のユーザーからは多くの驚きと喜びの声が相次ぎ、Weibo上に日中交流の場が出現したことが、最も印象に残る出来事だと言う。

「中国と日本は、同じように漢字を用いる国。他にも日本には中国をルーツとしながらも独自に成熟した文化があって、興味深いです。距離だけではなく、本当に中国と日本はとても『近い』国だと実感します」とリンさんは言う。

リンさんの活躍があって、中国のSNSのアカウントに「在日本」をつけたリンさんの仲間の中国人インフルエンサーが続々登場している。彼らの手本となるインフルエンサーとして、「日本の情報と言えばやっぱり林萍在日本!」と言ってもらえるような活動を続けることが目標だと、リンさんはとびきりの笑顔で語ってくれた。