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Highlighting JAPAN

 

民間の力をアフリカで活かす


第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が8月28日から30日まで、神奈川県横浜市で開催される。TICADの意義やTICAD7における議論について牛尾滋外務省アフリカ部長に伺った。

アフリカの現状をどのようにお考えでしょうか。

2000年から2017年までのサブサハラ・アフリカ地域の年平均成長率は5.1%と世界平均の3.8%を超えていました。人口は2017年に12.5億人でしたが、2030年には17億人、2050年には25億人を超える見通しです。今後、アフリカの市場は拡大すると見込まれており、世界中からアフリカに進出する企業が増加していくと予想されます。アフリカでは今年5月、単一市場の創設を目標とするアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)が発効し、投資や貿易の更なる活発化が期待されています。

また、以前は国境を越えた大きな紛争が各地で起こっていましたが、紛争の数は減り、規模も小さくなっています。ただ、アフリカの中でも国と国、あるいは国内における経済格差が大きくなっており、貧困は依然として深刻な問題です。

日本は1993年に第1回目のアフリカ開発会議(TICADⅠ)を開催しました。それ以来、TICADはアフリカの課題に対して、どのような役割を果たしてきたでしょうか。

1990年代初頭は冷戦が終了して間もなくだったため、アフリカに対する国際社会の関心が薄れる中、TICADは国際社会のアフリカへの関心を呼び戻すきっかけとなりました。現在、様々な国や地域でアフリカの開発に関するフォーラムが立ち上げられていますが、TICADはその先駆け的な存在であると言えます。

TICADの大きな特徴は、包括的かつオープンなフォーラムであることです。TICADは日本が主導する会議であり、日本政府と、国連や国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)が共同で開催しています。アフリカ諸国だけではなく、国際機関、開発パートナー諸国、民間企業や市民団体なども希望すればどの国も参加することが可能です。

TICADは、アフリカの「オーナーシップ」と国際社会の「パートナーシップ」の基本理念の実現、つまりアフリカの自助努力への支援に重きを置いてきました。25年以上にわたるTICADを通じて、こうした理念がアフリカや国際社会に浸透してきています。

TICAD7では主に何をテーマにして議論が行われる予定でしょうか。

一つは、官民連携による民間投資の促進や人材育成です。TICADでは当初、開発援助、紛争、難民などの問題に焦点が当てられていましたが、2008年のTICAD IV以降、投資や貿易が大きなテーマとなっています。2016年にケニアで開催されたTICAD VIには日本から多くの企業が参加しましたが、TICAD7では、企業がTICADの「主役」として、より深くコミットする予定です。

もう一つの重要なテーマは、全ての人が医療や保健に平等にアクセスできるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現を始めとする保健分野です。アフリカではUHCが十分に整備されず、エボラウイルス病など感染症の問題が発生しています。TICAD7ではこのほか、防災、教育、女性のエンパワーメント等、幅広い議論を行います。

そして三つ目が平和と安定の推進です。近年アフリカ自身が和平・紛争予防を手がけており、2018年、長らく紛争状態にあったエチオピアとエリトリアが平和協定を結びました。また、中央アフリカや南スーダンにおいても、東アフリカの地域機構である地域間開発機構(IGAD)が仲介し、アフリカ自身の手で和平実現に向けた取組が進んでおり、日本もIGADを通じてこの和平プロセスを支援しています。TICAD7では、平和と安定に向けたアフリカ自身による前向きな動きを後押しするとの考えに即して議論します。

日本政府は今後、アフリカに対してどのような支援を進めるかをお教えください。

人材育成と質の高いインフラを推進することで、民間企業のアフリカへの進出を促します。人材育成に関して、日本が2014年から実施している「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」(ABEイニシアティブ) は、アフリカ諸国から高い評価を受けています。また、国際協力機構(JICA)は各国の職業訓練センターを支援しています。産業人材育成は、民間投資の促進につながり、雇用を創出します。また、ビジネス活動の安定化を図るためには、アフリカの平和と安定の確保も不可欠です。法制度整備を始めとする制度構築を、人材育成を通じて支援していくことが必要です。多くの日本企業がアフリカでビジネスを展開することは、日本とアフリカの未来にとって極めて重要です。日本政府も、そうした民間企業のアフリカ進出を後押ししていきます。