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Highlighting JAPAN

六本木の夜を彩るアート

六本木アートナイトは、アートの街としても知られる東京・六本木で年に1度開かれる祭典である。六本木の街中がインスタレーション、音楽、映像など様々な作品によって、夜を通して、美しく彩られる。

六本木アートナイトの第一回が開催されたのは2009年3月のことで、10回目を迎える今年は5月25日と26日の2日間にわたって開かれた。1日目の日の入りから2日目の日の出までをコアタイムとして、夜通しで行われるイベントは、六本木の街やそこに集まる人々にどんな反応を引き起こしたのか。第一回から企画・運営に関わってきた森ビル株式会社(森美術館)の松島義尚さんに話を聞いた。

「これまで東京のアートの中心は、数多くの美術館や美術学校が集まる東京・上野近辺でした。そんな中、2000年代に入ると六本木に3つの大きな美術館が次々とオープンしていきました。この3つの美術館を核にしてアートで街全体を盛り上げていこうというのが六本木アートナイトなのです」と松島さんは言う。

 現在、六本木ヒルズ内の森美術館、東京ミッドタウンの一角にあるサントリー美術館、そして国立新美術館は「六本木アート・トライアングル」と呼ばれ、国内外の美術ファンから大きな人気を集めている。そこに東京都や港区などの自治体、さらには地元の六本木商店街などが主催団体として加わり、文化庁の支援を受け、六本木アートナイトは開催されてきた。

六本木アートナイトは、生活の中でアートを楽しむという新しいライフスタイルの提案、そして、大都市・東京における街づくりの先駆的なモデル創出という2つのテーマを掲げている。

「もともと日本人は夜遊びがあまり得意ではなく、たとえば夜9時にコンサートが終了すると、そのまま電車で帰宅してしまう人がほとんどでした。六本木アートナイトでは、様々なアートを鑑賞しながら食事をしたり、街中を散策したりと、今までとはひと味違う六本木の夜の過ごし方、楽しみ方を体験していただけたらと思っているのです」と松島さんは言う。

 「夜の旅 昼の夢」をテーマに今年開催された第10回六本木アートナイトでは、世界を舞台に活躍しているチェ・ジョンファが、海外から初めてのメインプログラム・アーティストとして招へいされた。六本木ヒルズアリーナには、野菜や果物をカラフルな巨大なバルーンで表現した彼の作品「フルーツ・ツリー」が展示された。この他にも、空間全体を使って見せるインスタレーションや音を使ったパフォーマンスなど、数多くのアートが六本木の街を彩った。展示される作品の数は第1回の28から今回は3倍以上90にまで増え、会場を訪れた観客の数も延べ約80万人に達している。

「回を重ねるごとにイベントの規模が大きくなっているだけでなく、参加するアーティストも、それを鑑賞する人々も、それぞれ自分のスタイルで六本木アートナイトを楽しむようになってきていることを実感しています。日本人ばかりでなく、外国人の来場者も着実に増えていますし、コアタイム以外の昼間の時間帯には、子ども向けのワークショップなどに参加する家族連れの方も多くなっています。さらにこの10年の間には、六本木の街に現代アートのギャラリーが何カ所もオープンするなど、街の姿そのものにも変化が現れています」と松島さんは言う。

 六本木アートナイトは既存のアートの枠を越えて幅広い人々の間に浸透し、地域に新たな活力を与えている。東京オリンピック・パラリンピックに先駆けて開催される来年は、海外からの来場者が更に増えることも予想されているため、これまで以上に日本らしさ、六本木らしさをアピールできるアートの祭典を目指している。