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安全で美味しい東北の魚

福島第一原子力発電所事故の影響で、福島県を含む東北地方の水産物の一部は、出荷が制限されていたが、現在は厳格な検査の下、市場に流通するようになっている。

福島県沖の海は、北から流れてくる親潮(千島海流)と、南から流れてくる黒潮(日本海流)がぶつかる「潮目の海」と呼ばれる場所である。ここは、魚の餌となるプランクトンが豊富で、暖流に住む魚と寒流に住む魚が集まってくるため、多くの種類の魚が獲れる豊かな海である。この海域で獲れる魚は「常磐もの」と呼ばれ、美味しい魚の代名詞にもなっている。

2011年3月の東日本大震災による津波により、福島第一原子力発電所から放射性物質が放出される事故が発生した。このため、原発事故直後から、国、関係自治体、漁業関係団体は連携し、福島県を含む東日本を中心に、水産物中の放射性セシウムの調査を開始し、水産物の安全性の確保を図っている。

2012年4月に食品中の放射性セシウムの基準値は500Bq/kg から100Bq/kgへと改定され、水産物も本基準値が適用されている。本基準値は、食品の国際基準を策定するコーデックス委員会が定める1,000Bq/kgよりも厳しいものである。

水産物の調査については、自治体が調査計画を策定し、その中で調査対象魚種、頻度、区域を定めている。主要生産品目や前年度に50Bq/kg超となった品目を中心に、原則週1回の調査を実施し、基準値を超過した場合には、原子力災害対策本部長(内閣総理大臣)による出荷制限の指示等がなされ、同一ロットの食品は回収され、市場に流通しない体制となっている。基準値を超えた魚種、海域については調査の強化がなされ、検査結果が全て基準値を安定的に下回れば、出荷制限等は解除される。なお、福島県では、上記のような県による調査に加え、福島県漁業協同組合連合会(JF福島漁連)が、国が定めたスクリーニング法に従って検査を自主的に実施している。JF福島漁連は国よりも厳しい自主基準値(50Bq/kg)を定め、スクリーニング検査で25Bq/kgを超えた場合には、県による精密検査が行われる。精密検査や、上記の県による調査で自主基準値を超えた場合には出荷を自粛する。これらの結果は全て、水産庁、自治体、関係漁業団体等のホームページで公表されている。

安全性の確保

原発事故後、2019年8月末までに、福島県を含む東日本を中心に約12万2千検体の水産物(海産種)の調査が行われている。100Bq/kgを超える割合は、事故直後には約21%であったが、その後、基準値を超えるものは時間の経過とともに減少し、直近では福島県において3年10ヶ月ぶりに基準値を超えたものが1検体検出されたのみとなっている(2019年1月)。

また、放射性物質の濃度も時間の経過とともに低下しており、2019年8月末現在、出荷制限の対象となっている海産種は、福島県沖で獲れる2魚種のみである。

福島県の水産物の水揚げ量は徐々に回復しており、県内外に流通する魚も増えている。こうした流れを後押しするために、様々な取組が実施されている。例えば、福島県、JF福島漁連、スーパーマーケットの「イオン」を運営するイオンリテールが協力して、首都圏と宮城県の10店舗において、福島県の沿岸や沖合で獲れたカツオ、サンマ、ヒラメなどの魚を販売する常設コーナー「福島鮮魚便」を開設し、専門の販売員が対面販売により、その魅力を直接消費者に伝えることで、好評を得ている。

また、福島県の沿岸南部のいわき市は、市内の水産関係者が一体となって、共通のロゴ作成やWEBページ開設等により、地域ブランド「常磐もの」の魅力発信に努め、市場関係者からの高い評価を得ている。

国際機関の評価

2013年11月から12月に国際原子力機関(IAEA)により派遣された調査団は、日本の海産物に関して、放射性物質の基準値の設定、海水及び流通する食品の包括的なモニタリング、出荷制限などの措置が市場に流通する海産物の安全性を確保していると評価している。また、2015年11月と2016年11月に、IAEAは、日本の水産物の放射性物質測定手法の適切さを確認することを目的に、水産物の放射性物質の測定にかかる機関間の比較を実施し、参加した日本の分析機関が水産物の放射性物質の分析において高い正確性と能力を有していることが確認された。