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Highlighting JAPAN

冬のスポーツ「雪合戦」

雪を丸めて投げ合う子供の遊びから発展した、スポーツとしての「雪合戦」が、国内のみならず、海外にも広がっている。

北海道の中心都市の札幌から鉄道と路線バスで2時間ほどの距離にある壮瞥町では、毎年雪合戦の国際大会「昭和新山国際雪合戦」が開催されている。雪合戦は雪を丸めて投げ合う子供の遊びだが、この大会は競技スポーツとして国際ルールに基づき行われている。2019年の大会は2月23日と24日に開催され、132チーム、約1,400人の選手が参加、昭和新山の麓に整備された会場で、「一般の部」や「レディースの部」など4つの部門に分かれて優勝を争った。晴天にも恵まれ、人口約2,500人の町に約2万7000人もの観客が詰めかけた。

壮瞥町には、中央に大きな島が浮かぶ洞爺湖、北海道を代表する二つの火山である昭和新山と有珠山、その恵みによる温泉など、数々の観光スポットがある。しかし、積雪のため冬には観光客が減少する。そのため、閑散期の集客対策として始まったのが国際雪合戦だった。

「壮瞥町を訪れる観光客は夏に集中し、冬の観光客誘致は町の大きな課題でした。また、1977年に昭和新山に隣接する有珠山が噴火したことで夏の観光客も減り、町の観光ムードは停滞していました。町民の誰もが何とかしなければという危機感を抱いていました」と昭和新山国際雪合戦実行委員会事務局長の三松靖志さんは話す。

そうした中、1987年に町内の農業、観光、行政など様々な分野の若者が集まり、町おこしを考えるグループが立ち上がった。そこで、様々なイベントが検討される中で、雪合戦を競技スポーツとした大会というアイデアが生まれた。

「グループのあるメンバーが、東南アジアからの観光客が生まれて初めて見る雪に感動し、夢中で雪を丸めて投げ合う光景を見たと言うのです。その話を聞いて、メンバーたちも子供の頃に夢中になっていた雪合戦を思い出したのです」と三松さんは言う。

雪合戦を競技スポーツにするということは全く新しい試みだったため、他のスポーツを参考にしながら議論を行い、ルールを固めていった。さらに、専用ヘルメットや雪球を大量に作る機械などの開発も行い、1989年2月に第1回大会が開催された。

試合は、36メートル×10メートルのコート内で、7名の選手で構成されるチーム同士が、雪球をぶつけ合う。コート内には7つのシェルター(縦90センチ、横90センチの壁)が配置され、選手は身を隠すことができる。1試合は3分3セットマッチで、2セット先取で勝利となる。使える雪球は1セットで90球。ノーバウンドで雪球に当った選手はアウトになる。時間内に生き残った選手数でセットの勝敗が決まる。または相手陣内にあるフラッグを抜くか、相手選手を全員アウトにしたチームが、そのセットを取ることになる。これが国際ルールである。

現在では、北は北海道から南は九州の大分まで、全国各地で同様の大会が行われている。また、壮瞥町とフィンランドのケミヤルヴィ市が友好都市になったことがきっかけで1994年に同市の選手団が昭和新山国際雪合戦に参加、その参加選手が中心となり1995年にはフィンランドで海外初の大会が開催された。この時には、壮瞥町からもスタッフが派遣され、技術指導や用具提供などの支援を行った。その後、北欧諸国、北米、オーストラリアにも広がり、2013年には11か国で構成する「国際雪合戦連合」も設立された。

「人間には雪を丸めて投げ合って遊びたいという本能があると思います。だからこそ、国境を越えて多くの人たちが楽しめるのだと思います。競技スポーツとしての成熟を目指しながら、いつか、雪合戦を冬季オリンピックの競技種目にしたいです」と三松さんは語る。