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  • 朱漆塗八隅膳・椀
  • 海老沈金吸物椀
  • 鶴若松蒔絵杯
  • 黄漆塗桜鳥沈黒五段重・重台

January 2021

堅牢優美な漆器

鶴若松蒔絵杯

日本の伝統工芸の一つに海外で“Japan Ware”(日本の器)として知られる漆器がある。全国各地に様々な漆器の産地があるが、その中でも堅牢優美な漆器として、日本人に愛好されているのが輪島塗である。

海老沈金吸物椀

華やかさと堅牢さを兼ね備えた木製漆器「輪島塗」は、日本海に面した石川県輪島市で生産されている。15世紀がその最初期と考えられる輪島塗は、輪島が廻船(かいせん)航路の要所として栄えた17世紀以降、そのルートに乗って全国各地に広まった。

「当時の輪島で産出した漆(ウルシの木の幹から採取した樹液)、木地に使われるケヤキなどの樹木、珪(けい)藻土など、多様な原料を使用した優美な“ハレの場”を彩る高級漆器として、全国各地の豪商や豪農らからの需要が高まりました。18世紀以降は分業化が発達し、より良質の漆器を量産する体制が整えられました」と石川県輪島漆芸美術館学芸員の寺尾藍子さんは話す。現在、輪島は日本を代表する産地となり、伝統的技術による木製漆器において、トップクラスの生産額を誇っている。

朱漆塗八隅膳・椀

輪島塗の工程には「木地づくり」「髹漆(きゅうしつ=漆塗り)」「装飾」という3つの段階があり、それぞれ高度に専門化された手仕事で成り立ち、全ての工程は100を超える。工程ごとに職人も異なり、一つの椀が完成するまでに1年以上の時間を要することもある。さらに、江戸中期以降には「沈金」、明治以降には「蒔絵」という技法が本格的に取り入れられ、実用品としての丈夫さに加え、金や銀で華やかに装飾された輪島塗の人気が高まった。沈金は漆の固い塗膜面にノミで文様を彫り、その彫り跡に漆で金箔、金粉を密着させていくもので、輪島塗の重厚な塗りを活かした技法である。また、蒔絵は漆器の表面に漆で模様を描き、それが固まらないうちに金・銀粉等を振りかけ、器面に定着させる技法である。

黄漆塗桜鳥沈黒五段重・重台

石川県輪島漆芸美術館は、輪島塗を始め国内外の漆芸品が展示されている日本で唯一の美術館である。

「箸やスプーンなどに装飾を施す手作り体験も随時可能となっています。海外からの来館者向けに、英語や中国語(簡体字・繁体字)などの多言語対応した作り方の解説書も用意してあります」と寺尾さんは語る。

漆器の名品を鑑賞した後、漆器を手づくりした「マイ漆器」を家族へのプレゼントやおみやげにするのも楽しいだろう。